2023 Fiscal Year Research-status Report
皮質-線条体投射ニューロンの新たな機能―成体ニューロン新生との関係
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21K06735
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
森 徹自 鳥取大学, 医学部, 教授 (30285043)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡田 誠剛 倉敷芸術科学大学, 生命科学部, 教授 (40334677)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 成体ニューロン新生 / 脳室下帯 / グルタミン酸 / 軸索当社 / 帯状皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの研究から、内側大脳皮質に存在する皮質‐線条体投射ニューロン(corticostriatum projection neuron, CStrPN)は、成体の脳室下帯(subventricular zone, SVZ)における新生ニューロンの移動を制御していることが判明している。これは、成体期にCRtrPNを破壊して、SVZへの入力を遮断することで示すことができた。 今年度は、CStrPNが、SVZとそこに存在する神経幹細胞の成熟・分化に及ぼす影響について、発生学的な観点から検討した。その際、子宮内電気穿孔法によって、ニューロンの興奮を人為的に促進/抑制する遺伝子、NaChBac/Kir2.1をそれぞれCStrPNに導入することで、SVZの生後発達を解析した。 この解析の前提条件として、まずは生後/成体SVZにおける神経幹細胞の形態変化を明らかにする必要がある。神経幹細胞は、マーカーとしてグリア線維性酸性タンパク質(Glial fibrilary acidic protein, GFAP)を発現し、胎生期の放射状グリア様の形態を持つことが知られているが、成熟に伴う詳細な形態変化は不明である。そこで、生後SVZの神経幹細胞を可視化するために、GFAPプロモーターで蛍光タンパク質を発現するプラスミドを、生直後マウスのSVZに導入した。そして、神経幹細胞の形態変化を検討したところ、生直後は胎生期の放射状グリア同様、分岐しない1本の長い突起(basal process)を有する形態であった。成熟と共に、basal processに分枝と無数の微細な突起を有する形態を持つ細胞に変化することが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
前年度に引き続き、電気穿孔法による遺伝子導入に苦労した。子宮内あるいは生後マウスへの電気穿孔法によるプラスミド導入は、導入部位や効率を一定化することが非常に困難である。そのため、非常に多くの個体を処理し、解析に適する個体の確保に時間がかかった。 また、多くの学内業務のために、十分な研究時間を確保することが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
CStrPNの破壊実験結果を、別の視点から裏付けるためには、NaChBac/Kir2.1を導入し、生後発達を検討する実験が重要になってくる。本研究課題を推進する上での障壁は、前述の通り、電気穿孔法による遺伝子導入の手技的問題である。しかし、発生学的な側面から解析を行うためには、代替手段が存在しない。引き続き検討・解析を行ってゆく。
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Causes of Carryover |
電気穿孔法による遺伝子導入では、導入効率、導入部位を一定に保つことが難しい。解析に適した個体を得るまでに時間を要した。遺伝子導入自体は費用が掛からないが、解析には多種類の試薬を必要とするため、多額の予算が必要になる。令和5年度までに、解析に適した個体を一定数確保することができた。令和6年度は、これらの個体を解析しつつ、さらに遺伝子導入を行う計画である。
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