2021 Fiscal Year Research-status Report
肺腺癌multi-omicsデータを用いた、ミトコンドリアの分子病理学的意義探索
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21K06899
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
坂下 信悟 国立研究開発法人国立がん研究センター, 先端医療開発センター, ユニット長 (40620638)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ミトコンドリア |
Outline of Annual Research Achievements |
今回の研究は、産学官共同創薬技術活用プロジェクト(GAPFREE)によって収集された、様々なOmicsデータが付随する肺がんデータセットを用いて行っており、本研究の目的は、「ミトコンドリアをはじめとする代謝環境のがんにおける役割を分子病理学的視点で調べる」という事である。 まず、肺がん切除材料のFFPE検体を用い、COXIVの抗体を用いたミトコンドリアの免疫染色を行った。免疫染色の評価については、In silicoでの画像解析によって、1細胞あたりのミトコンドリア数を定量評価できるようなシステムを構築した。具体的には、まず画像をHSV空間に変換し、色合いによって核および免疫染色(DAB)を分離。抽出した核に対し、watershed アルゴリズムを用いて核の数をカウント、抽出された免疫染色陽性像に対しては、ピクセル数をカウントした。そして最後に免疫染色のピクセル数を核数で除す事により値を算出するシステムを構築した。そのシステムによって算出されたスコアをMitoscoreと名付け、次の検討を行った。このMitoscoreがミトコンドリアの量と相関するか、正常組織、具体的にはマクロファージ、腎臓の尿細管、肺組織を用いて検証し、妥当である事を確認した。 肺がんの病理組織学的情報との比較を行ったところ、肺小細胞がんにおいて、有意にミトコンドリアの量が少ない事がわかった。肺腺癌、肺扁平上皮癌については、ミトコンドリアの量にばらつきがあったが、量によって、悪性度に有意差はなかった。肺腺癌の亜型、肺扁平上皮癌の分化度とも比較を行ったが、相関は認められなかった。よって、肺の組織型とは相関がある可能性があるが、病理医が観察する病理形態像(組織亜型)とは相関を見つけられなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この研究の主眼は、ミトコンドリアを中心とした代謝状態と遺伝子変異、遺伝子発現、病理組織情報を比較する事である。よって、まず一番の根幹は、「ミトコンドリアの状態」を定量評価、数値化するシステムの開発である。それによって、様々な情報と比較ができるようになる。今回、ミトコンドリアの量については、免疫染色および画像解析技術を用いて、1細胞あたりのミトコンドリアの量と相関するMitoscoreを算出するシステムを構築した。 これは、正常組織を用いて、一般的にミトコンドリアの量が多い、もしくは少ない事が知られている組織によって妥当性が確認された。 これにより、遺伝子変異、遺伝子発現、病理組織情報との比較が可能な状態になった。 実際、肺がんの病理組織学的情報との比較を行ったところ、肺小細胞がんにおいて、有意にミトコンドリアの量が少ない事がわかった。肺腺癌、肺扁平上皮癌については、ミトコンドリアの量にばらつきがあったが、量によって、悪性度に有意差はなく、肺腺癌の亜型、肺扁平上皮癌の分化度とも比較を行ったが、相関がない事がわかった。よって、肺の組織型とは相関がある可能性があることがわかった。 よって、本研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今回のミトコンドリアの定量システムによって算出された値が、遺伝子変異、遺伝子発現とどのような関係にあるのかが、次のステップである。しかし、今回の値が、本当にミトコンドリアの量と相関するのかという事を証明する必要があると考えている。具体的には、肺がん細胞株を用いて、ミトトラッカーとの比較、電顕写真で実際にミトコンドリアの量を数えたものとの比較、real-timePCRによって体細胞DNAとミトコンドリアDNAの量を算出したものとの比較を考えている。 このステップによってMitoscoreがミトコンドリアの量と相関する事が判明すれば、様々なOmicsデータとの比較に移る予定である。
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Causes of Carryover |
1年目の研究のほとんどが通常のPCの画像処理で行う事ができたが、2年目以降はOmics解析、機械学習など高度な計算を必要とするPCが必要となる。1年目は半導体不足もあり、PCの購入が不安定であったため2年目に購入する事とした。また、コロナウイルスの影響があり、旅費の大部分が余ったため、2年次以降に繰り越した。
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[Journal Article] Assessing therapy response in patient-derived xenografts2021
Author(s)
Ortmann J, Rampasek L, Tai E, Mer AS, Shi R, Stewart EL, Mascaux C, Fares A, Pham NA, Beri G, Eeles C, Tkachuk D, Ho C, Sakashita S, Weiss J, Jiang X, Liu G, Cescon DW, O'Brien CA, Guo S, Tsao MS, Haibe-Kains B, Goldenberg A.
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Journal Title
Science Translational Medicine
Volume: 13
Pages: 620
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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