2022 Fiscal Year Research-status Report
非腫瘍組織における加齢性遺伝的変化の解析-がん間質発生機序との関連を探る-
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21K07133
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
梅津 知宏 東京医科大学, 医学部, 准教授 (40385547)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | がん間質 / 加齢性変異 / cell free DNA / mutational signature |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、「加齢に伴う遺伝的変化が間質系の細胞にも生じているのではないか」「加齢性の遺伝的変化の生じた間質細胞が、一見正常に見える前がん病変の微小環境を形成しているのではないか」との着想から、臨床サンプルを用いた全エクソーム解析と培養モデル系によるメカニズム解析によって、これまで一定の見解を示すことのできていなかったがん関連間質細胞の遺伝的変化について明確な解答を導き出すことを目的とした。 初年度のR3年度では、研究計画に従い肺癌患者23検体、膵癌患者10検体を用いてエクソーム解析を行い、非腫瘍部と腫瘍部との体細胞変異を比較検討した結果、腫瘍部では、KRAS, TP53, PIK3CA, SMAD4などのドライバー変異が抽出された。一方、間質組織からも体細胞変異が抽出されたものの、いわゆる上記のようなドライバー変異は検出されず、VUS変異と考えられた。 R4年度では、このVUS変異およびその病態に関与が不明であるパッセンジャー変異に注目して解析を進めた。がん間質だけでなくその個体における加齢性遺伝的変化の検出を目論み、cell free DNA(cfDNA)からの体細胞変異の抽出を行った。その結果、癌患者由来cfDNAだけでなく健常者由来cfDNAからもVUSを含む体細胞変異が抽出された。この意義不明の変異を可視化および意義付けするために、SigProfilerを用いてmutational signature解析を行った。肺癌患者および健常者由来cfDNAを用いて行ったエクソームシーケンスのVCFファイルを用いてde novoおよびCOSMICにカタログ化されたmutational signatureへのアノテーションを行い、健常者由来cfDNA特有のmutational signatureの存在を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
患者検体(FFPE検体、cfDNA)の採取、保管管理、および検体からのgDNAの回収等のフローが構築済みであり、スムーズに研究を進行することができた。また、エクソーム解析においてもライブラリ調整およびデータ解析( がん変異抽出)についてもノウハウが蓄積している状態であったため、データ取得から解析結果を得ることが可能であった。また、新たにmutational signature解析のパイプラインの構築も行ったが、NGS解析技術に長けた研究協力者の助言により滞りなく進行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
R4年度で行った臨床検体からの解析結果を踏まえ、検体数を追加してさらに解析を進める。R5年度では、加齢(aging)による変化が、組織内の老化(senescence)細胞の蓄積による個体・組織の老化と想定し、間質細胞における加齢性の遺伝子異常を擬似的に誘導するため、ヒト正常皮膚繊維芽細胞(NHDF,LONZA)にUV、放射線、化学物質を低照射、低濃度で持続的に処理する培養モデル系を構築する。この老化誘導型NHDFのエクソーム解析の結果、UV照射による損傷と修復の繰り返しで生じたと考えられるゲノム上のvariantが確認されている。また、これらの細胞が放出するcfDNAが、周辺の細胞(特に腫瘍細胞)のゲノム模様に影響を及ぼしている可能性も考慮し、培養上清からcfDNAを抽出し、それらを各細胞株に添加して数日間培養後にエクソームシーケンスを行い、mutational signature解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究成果について国内外の学会発表を予定していたが、年度内の学会はコロナ禍の影響でほとんどがオンライン開催であったため、計上していた「旅費」との差額が生じた。投稿論文のスケジュールが多少ずれ込み、英文校正費用の計上にも差額が生じている。これらの差額分は最終年度で英文校正費、投稿費に使用する予定である。
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