2021 Fiscal Year Research-status Report
ヒト肉腫自然発症モデルを利用した血中悪性化指標マーカーの探索
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21K07192
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
山田 大祐 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (50733680)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中田 英二 岡山大学, 医歯薬学域, 講師 (10649304)
宝田 剛志 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30377428)
高尾 知佳 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (40612429)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 骨肉腫 / 肢芽間葉系細胞 / ヒト多能性幹細胞 / 自然発症モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者らは、ヒト骨肉種では転写制御因子PRRX1が高発現していることを見出しているだけでなく、PRRX1の発現量が高い患者は予後不良を示すことも明らかにしている。さらに、マウス骨肉腫モデルでもPRRX1が発現しているだけでなく、ヒト骨肉腫細胞株143Bにおいては、PRRX1のノックダウンによって増殖性や浸潤性が低下するだけでなく、ドキソルビシンとシスプラチンへの抵抗性が解除されることも見出している。これらの研究実績は、Transl Oncol 誌(2021 Vol. 14 Issue 1 Pages 100960)にて発表を行い、骨肉腫におけるPRRX1の増悪因子としての機能を明らかにした。その後、悪性神経鞘腫においてもPRRX1が増悪因子として機能することも見出しており(未発表データ)、肉腫におけるPRRX1の重要性が明らかになってきている。また、Nature Biomedical Engineering誌(2021 Vol. 5 Issue 8 Pages 926-940)にて、ヒト多能性幹細胞から発生過程を模倣した分化誘導方法を用いて、肢芽間葉系細胞を作成する技術に関しての発表を行い、本研究課題を遂行するための研究ツールの開発にも成功している。研究成果は、AMED及び申請者の所属機関である岡山大学にてプレスリリースを行い、一般向けの内容紹介を掲載して公開されている。さらに、ヒト多能性幹細胞から作成した肺オルガノイドを用いて、前がん病変を再現することにも成功している(Int J Cancer 2021 Vol. 149 Issue 8 Pages 1593-1604)。以上の結果から、ヒト多能性幹細胞を用いた腫瘍モデルを構築するための実験技術に関しては、十分整っていると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Ewing肉腫、骨肉腫、軟骨肉腫といった肉腫においては、がん抑制遺伝子であるTP53の機能欠損変異が確認されている。そこで、申請者はCRISPR-Cas9の技術を用いて、TP53の機能が欠損したヒト多能性幹細胞の樹立を今年度は実施した。CRISPR-Cas9の系を導入後、細胞をMDM2阻害剤であるNutlin3Aで処理することにより、TP53の機能が欠損した細胞のみを選択することが可能となった。その後、シングルセルクローニングを行い、2つのヒト多能性幹細胞からTP53機能欠損株を得ることに成功した。次に、Nature Biomedical Engineering誌(2021 Vol. 5 Issue 8 Pages 926-940)で発表した肢芽間葉系細胞の分化誘導方法を用いて、TP53機能欠損株からPRRX1陽性な肢芽間葉系細胞を誘導することにも成功した。また、TP53機能欠損株由来肢芽間葉系細胞から、硝子軟骨様組織体が作成可能であることも確認している。また、Ewing肉腫ではEWS-FLI1融合遺伝子、骨肉腫ではRB1遺伝子の欠損、軟骨肉腫ではIDH1の変異体が観察されていることから、piggyBACの系を用いて、ドキシサイクリン誘導的にEWS-FLI1あるいはIDH1変異体の発現誘導もしくはRB1遺伝子のノックダウンを行える系に関しても作成することにも成功している。以上の結果から、本研究課題の仮設を検証するための実験条件が、順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、TP53機能欠損ヒト多能性幹細胞の樹立、TP53機能欠損ヒト多能性幹細胞由来肢芽間葉系細胞の作成、そして肉腫で確認されている遺伝子変異のドキシサイクリン誘導的な発現誘導技術の開発といった、本研究課題を遂行する上で必須な研究ツールの作成に成功した。次年度は、TP53機能欠損ヒト多能性幹細胞由来肢芽間葉系細胞にドキシサイクリン誘導的にEWS-FLI1あるいはIDH1変異体の発現誘導もしくはRB1遺伝子のノックダウンを行える系を導入し、硝子軟骨様組織体を作成してin vitroにおける軟骨肉腫並びにEwing肉腫モデルの構築を行う。肢芽間葉系細胞からの骨芽細胞への分化誘導技術の開発を行うことで、骨肉腫モデルの構築に関しても実施する計画である。また、ドキシサイクリン誘導的にEWS-FLI1あるいはIDH1変異体の発現誘導を行えるTP53機能欠損ヒト多能性幹細胞由来肢芽間葉系細胞あるいは同細胞から作成した硝子軟骨様組織体を免疫不全動物に移植した後、ドキシサイクリンを投与することで、腫瘍の形成が誘導されるのかに関しても検証する予定である。さらに、腫瘍化した組織体特異的に発現している遺伝子を同定し、その遺伝子の発現を可視化出来るレポーターシステムを構築することで、肉腫治療を目的としたハイスループットスクリーニングを実施するための実験系の構築を行うことも計画している。以上の実験により、ヒト多能性幹細胞を用いた肉腫モデルの構築が到達出来ることが期待される。
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Causes of Carryover |
研究遂行上、免疫不全動物を使用した肉腫モデルの確立については次年度実施することになったため。使用計画についてはそれらに必要な物品費等に充当する予定である。
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