2022 Fiscal Year Research-status Report
行動の抑制を実現する神経回路動態の解明:fMRI・TMSによる複合的検証
Project/Area Number |
21K07255
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
長田 貴宏 順天堂大学, 医学部, 准教授 (00456104)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 機能的磁気共鳴画像法(fMRI) / TUS / 経頭蓋超音波刺激 / 反応抑制 / 前頭前野 / 大脳基底核 / 皮質下領域 / 経頭蓋磁気刺激(TMS) |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、自分自身の行動の抑制(反応抑制)を実現する神経回路メカニズムの解明を目的としている。これまで行ってきた機能的磁気共鳴画像法(fMRI)によるヒト反応抑制に関わる脳領域やネットワークの同定、同定された脳領域に対し経頭蓋磁気刺激(TMS)による介入に加え、前年度から着手してきた経頭蓋超音波刺激(transcranial ultrasound stimulation; TUS)を用いた研究を令和4年度は大きく進めることができた。TUSは、超音波により非侵襲的に大脳皮質のみならず脳深部領域に対しても可逆的に介入できる手法である。まず妥当性の検証としてヒト一次運動野に対しTUSを行ったところ、運動誘発電位の低下が観測され、脳に対して活動を抑制させる効果が確認できた。次に反応抑制機能について、大脳基底核へのTUSの効果を調べた。視床下核や被殻前部に対し刺激したところ、反応抑制の効率の低下が見られた。さらに拡散MRIにより被殻前部と解剖学的結合性が見られた下前頭皮質前部に対しTUSを行ったところ、反応抑制効率の低下が観測された。これらからよく知られているハイパー直接路に加え、下前頭皮質前部-被殻前部の間接路が反応抑制に関わることが明らかになった。以上の成果をまとめ、Cell Reports誌に発表した(Nakajima, Osada et al., Cell Reports, 2022)。また、TUSの限局した部位を刺激できるため、ターゲット設定が非常に重要になる。第一背側骨間筋に対応する一次運動野領域をfMRIおよびTMSにより被験者ごとに同定し、TUS適用のため脳表からの深さの分布について報告した(Osada et a., Brain Stimulation, 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
反応抑制を実現する神経回路メカニズムの解明に向けて、従来行ってきたfMRIとTMSでの実験に加え、新たにTUSを導入し、大脳皮質のみならず皮質下領域に対しての非侵襲的介入を行ってきた。具体的には、第一背側骨間筋に対応する一次運動野領域をfMRIにより同定し、その領域に対しTUS照射を行った。TUS前後での運動誘発電位(motor-evoked potential [MEP])をTMSにより調べたところ、持続したMEPの低下が見られた。これからTUSにより神経活動を抑制できることが確認された。次に、反応抑制機能を調べるストップシグナル課題を用いて、脳深部の大脳基底核へのTUSの効果を調べた。反応抑制時に視床下核や被殻前部の活動がfMRIにより確認され、これらの脳領域に対しTUSを行ったところ、反応抑制の効率の低下が見られた。さらに、拡散MRIから被殻前部と下前頭皮質前部の間の解剖学的結合性を見出し、今まで知られていなかった下前頭皮質前部-被殻前部の間接路による神経回路が反応抑制に関わっていることを示した。このようにfMRI、拡散MRI、TMS、TUSなどを有機的に組み合わせ、それぞれの手法の利点をおおいに活かした研究を進めることにより、全脳における情報処理回路の解明を進めることができている。また、皮質下領域への非侵襲的な介入が可能になったことにより、研究の幅を広げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きfMRIおよびTMSやTUSによる非侵襲的介入手法を組み合わせた実験を行い、皮質領域間の神経回路、さらに皮質領域-皮質下領域での神経回路を同定し、反応抑制を実現させる脳内情報処理の検証をさらに進めていく。これらの成果をまとめ、学術雑誌への原著論文の投稿・発表を予定している。また、得られた成果は、研究室のウェブページやプレスリリースなどを用いて、積極的に社会に発信する。
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Causes of Carryover |
当初の予定以上に研究が進み、さらに研究を円滑に推進するために、前倒し請求を行った。しかし、他予算が使用できることとなり、結果的に前倒し請求を行った分の使用が少なくなった。
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Research Products
(21 results)
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[Journal Article] Hypothalamic interaction with reward-related regions during subjective evaluation of foods2022
Author(s)
Ogawa A, Osada T, Tanaka M, Suda A, Nakajima K, Oka S, Kamagata K, Aoki S, Oshima Y, Tanaka S, Hattori N, Konishi S
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Journal Title
NeuroImage
Volume: 264
Pages: 119744
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Advantages of Using Both Voxel- and Surface-based Morphometry in Cortical Morphology Analysis: A Review of Various Applications2022
Author(s)
Goto M, Abe O, Hagiwara A, Fujita S, Kamagata K, Hori M, Aoki S, Osada T, Konishi S, Masutani Y, Sakamoto H, Sakano Y, Kyogoku S, Daida H
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Journal Title
Magnetic Resonance in Medical Sciences
Volume: 21
Pages: 41~57
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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