2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K07269
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
武田 祐輔 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 脳情報通信総合研究所, 主任研究員 (60505981)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 安静時脳活動 / 信号伝達 / 脳波 / 脳磁図 / 時空間パターン |
Outline of Annual Research Achievements |
安静時にヒト全脳で自発的に生じる信号伝達が明らかになれば、全脳に分散された情報がどのように統合され意識が生まれるのか、そのメカニズム解明に繋がると考えられる。そこで本研究では、安静時にヒト全脳で瞬時的に生じる信号伝達を解明する。その為に、安静時脳活動を脳波と脳磁図で同時計測し、全脳で繰り返し生じる信号伝達を推定する。脳波-脳磁図同時計測には、(株)国際電気通信基礎技術研究所が所有する脳波計と光ポンピング磁力計を用いる。 2021年度には、光ポンピング磁力計を用いて脳磁図計測を行うための実験システムを開発した。開発システムの有効性を検証するため、正中神経刺激中の脳活動を、開発システムを用いて計測した。計測データから皮質電流を推定することで、計測データに一次体性感覚野に由来する誘発磁場が含まれていることを確認した。この結果より、開発した実験システムの有効性が示唆された。 また、安静時脳波-脳磁図から全脳で繰り返し生じる信号伝達を推定するためのアルゴリズムを開発した。視覚野から運動野へといった信号伝達は、時空間パターンとして脳波や脳磁図に現れる。この時空間パターンを捉える解析手法を確立し、安静時脳波-脳磁図に適用することで、時空間パターンを推定した (Takeda et al., 2021 NeuroImage)。推定パターンの生成メカニズムを明らかにするため、蔵本モデルを用いたシミュレーション実験を行った。結果、推定パターンは準安定性ダイナミクスにおける全脳の信号伝達によって生成されたことが示唆された。更に、時空間パターンから信号伝達を推定するためのアルゴリズムを考案し、シミュレーション実験によってその有効性を検証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、脳波-脳磁図同時計測実験に向けて、光ポンピング磁力計を用いた脳磁場計測システムを開発し、正中神経刺激実験によってその有効性を確認した。また、安静時に自発的に生じる信号伝達の解明に向けて、安静時脳波-脳磁図から繰り返し現れる時空間パターンを推定する解析アルゴリズムを確立した。従って、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題では、安静時にミリ秒の時間スケールで生じるヒト全脳の信号伝達を明らかにする。その為に、安静時脳活動を、脳波と脳磁図で同時計測する。そして計測データから、全脳で生じる信号伝達を推定する。さらに、計測データと解析コードをウェブで公開する。 2022年度は、2021年度に引き続き、脳波と脳磁図を同時計測するための実験システムを開発する。脳波と光ポンピング磁力計のセンサを取り付けたキャップを作成し、その有効性を予備実験で検証する。開発した実験システムを用いて、安静時脳活動を計測する。被験者には、ぼんやりと固視点を見るよう指示する。比較のため、映画鑑賞時の脳活動も計測する。 また、安静時脳波-脳磁図に現れる時空間パターンから信号伝達を推定するアルゴリズムを開発する。これまでに、電流源推定に伴って生じる信号漏洩によって偽陽性の信号伝達が推定されてしまう問題が報告されている。この問題への対応策を考案し、その有効性を現実的なシミュレーション実験によって検証する。 そして、開発アルゴリズムを計測データに適用し、信号伝達を推定する。結果を映画鑑賞時のデータから推定された信号伝達と比較することで、安静時に特異的な信号伝達を特定する。また、被験者間の再現性も検証する。 2023年度には、研究成果をまとめ、学会・論文発表を行う。また、(株)国際電気通信基礎技術研究所が所有するウェブサーバを用いて、計測データと解析コードをインターネット上で公開する。
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