2021 Fiscal Year Research-status Report
軸索・シナプス修飾因子GPR3を用いた中枢神経障害後の神経回路再構築療法への応用
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21K07274
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田中 茂 広島大学, 医系科学研究科(医), 講師 (20512651)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細見 直永 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 研究員 (70363190)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | GPR3 / 神経突起伸張 / 神経極性形成 / 神経軸索再生 / 神経細胞生存 / シナプス / cAMP / PI3キナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では恒常的Gs活性化型G蛋白共役型受容体GPR3が、神経障害後の軸索再生やシナプス形成・維持に与える影響について検討をすすめている。 本年度は、GPR3が神経突起伸張や極性形成に与える影響やメカニズムを詳細に解明し論文報告した。具体的には、小脳顆粒神経細胞において、GPR3がPKA、ERK、PI3キナーゼを介したシグナル伝達経路を介して神経突起伸長を促進させること。さらに、GPR3による神経突起伸長は、Gタンパク質共役型受容体キナーゼ-2(GRK2)によるシグナル伝達やGPR3のC末端セリン/スレオニン残基のリン酸化に関連し、下流のPI3K-Aktシグナルに影響を与えることを解明した。また、GPR3は海馬神経細胞の発生初期に発現し、神経突起先端部に濃縮され、PI3K依存的に神経極性形成を加速することも明らかにした。 研究代表者らはさらに、神経障害後の軸索再生についてマウス網膜の虚血および視神経破砕モデルに基づいて、神経細胞の生存と軸索再生に GPR3 が関与する可能性を検討した。GPR3ノックアウトマウスでは、加齢や虚血条件下では、網膜神経節ニューロン(RGN)の脆弱化が観察された。また、GPR3ノックアウトマウスでは、視神経破砕後ザイモサン刺激による軸索再生が有意に抑制された。さらに、RGNへのGPR3遺伝子導入により、視神経障害後の軸索再生を促進し、これはザイモサン処理によってさらに増強された。したがって、GPR3は神経細胞の神経突起の伸長、極性形成、生存、軸索再生、およびそれに伴う神経細胞の生涯にわたる恒常性維持に機能していることが示唆された。 また、GPR3がシナプス形成に与える影響については、PC12細胞を用いて神経細胞分化に伴って発現上昇するGPR3が、核内受容体を介してシナプシン遺伝子発現を促進しすることを明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
GPR3が神経突起伸張や極性形成に与える影響やメカニズムについては既に本年度に論文報告を行っている。 GPR3発現が神経細胞においてシナプス形成や機能に与える影響について、in vitroの検討は当初の予定通り研究が進んでおり、一部のデータについて既に学会報告を行っている。 GPR3が神経障害後の軸索再生に与える影響に関しても、順調に解明が進んでおり、一部データについて既に学会報告を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、GPR3発現が神経細胞においてシナプス形成や機能に与える影響について、PC12細胞においてGPR3発現がドパミン取込や放出などシナプス機能への関与をさらに検討する。さらに、初代培養神経細胞やin vivoにおけるGPR3発現が、シナプス機能における役割について解明をすすめる予定である。GPR3が神経障害後の軸索再生に与える影響、シナプス形成に与える影響に関して、これらの研究成果は次年度中に論文投稿を予定している。 また、神経細胞に発現するGPR3が神経細胞恒常性に果たす役割や、脳梗塞やアルツハイマー病など神経疾患病態への関与を今後さらに検討すると共に、治療への応用を模索する予定である。
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Research Products
(17 results)