2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies on circuit-mechanisms of cerebellar hypolpasia by mosaic distribution of CASK deficient neurons.
Project/Area Number |
21K07293
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
森 琢磨 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (70545798)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CASK / SIK1 |
Outline of Annual Research Achievements |
女児に特徴的な脳形成異常、MICPCH症候群モデルマウスである、CASKヘテロ欠損マウスを用いて、小脳形成過程を組織学的に解析した。X染色体不活性化様式を全身で可視化するマウスを組み合わせることで、CASK発現細胞とCASK欠損細胞を脳組織全体で解析する手法を確立するに至った。CASKヘテロ欠損マウスは、成長とともに小脳が脳全体に占める割合は低くなるものの、小脳サイズは萎縮するわけではなく、むしろ成長とともに大きくなることが明らかになった。特に生後2から3週間における小脳サイズがほとんど変化しなかったことから、この生後2週前後に小脳の発達に異常があると考えられた。そこで、小脳組織の解析を進めたところ、小脳の顆粒細胞でCaspase3の切断(活性化)が観察された。このことから、CASK遺伝子の欠損によって小脳顆粒細胞が細胞死し脱落することが、MICPCH症候群の発症過程ではないかと推測された。 CASKと同様に発達障害に関わるキナーゼとして注目するSIK1遺伝子の変異マウスについても解析を進め、SIK1変異マウスでは、興奮性シナプスの異常と自閉症用の行動異常が観察されることが明らかになった。このマウスでは、興奮性シナプスが増強しており、その結果として、シナプスの興奮抑制バランスが異常となることが明らかになった。そして行動学的には、常同行動と社会行動異常が観察されるという、自閉症様の行動特性を示した。自閉症の治療薬として用いられるリスペリドンを投与することで、常同行動は緩和されたが、社会行動の回復は見られなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CASKについては、計画通りにCASK遺伝子の発現の有無と細胞の割合を小脳及び大脳新皮質での解析をほぼ終えることができた。しかし、これら脳組織を構成する細胞タイプ別のCASK発現を正確に評価するには至っておらず、2年度以降の課題となっている。本研究では組織解析が研究手法の中心となっているが、組織画像撮影に必要なCCDカメラが、世界的な半導体不足によって入手困難であることが判明した。CCDカメラを使用しない解析項目を先に進めることで、研究の遅延を最小限に留める必要があると考えている。 SIK1については、発達障害に着目して解析した研究成果は論文として報告した。本研究プロジェクトは、リン酸化シグナルの下流に共通点が多いことから、CASKの解析にも役立つと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
組織解析において高解像度の組織画像を取得することは、研究のQualityを左右する重要な要素と言える。本研究では、初年度に高解像度冷却CCDを購入することで、組織解析を迅速に進める予定であった。しかしながら、世界的な半導体不足のため、CCDの供給体制が整っておらず、今年度は受注が停止されている状態であった。次年度に供給体制が戻らない可能性も考えられるため、CASKマウスを用いた行動解析を進めることに注力する。また、共焦点顕微鏡を用いることで組織画像を取得する予定であるが、取得に時間がかかり、かつ、広範囲の画像が取得できないことから、AIを用いた画像解析法の確立も検討する。
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Causes of Carryover |
世界的な半導体不足によって、購入を予定していた冷却CCDの受注がキャンセルされたため、翌年度以降に供給体制が回復次第購入する予定である。
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Research Products
(4 results)