2021 Fiscal Year Research-status Report
社会的ストレスによる多面的攻撃性増強の神経機序解明
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21K07489
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
山本 亮 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (30447974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古山 貴文 金沢医科大学, 医学部, 助教 (20802268)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 攻撃性 / ストレス / 分界条床核 / 視床下部 / 威嚇音声 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ストレスによる攻撃行動の調節とその基盤となる神経回路機構の解明を目指すことである。これらを明らかにするために、行動実験と光遺伝学化学遺伝学、スライス電気生理実験、解剖学的実験を組み合わせて研究を行う。今年度は社会的ストレス負荷時の攻撃行動の観察を中心として実験を行った。当初実験に使用を予定していたマウスは社会的孤立ストレスを加える事で攻撃性が増強する傾向にあった。また、最初に実験に用いていたC57BL/6マウス系統は攻撃行動の表出が安定しなかったが、ICRと交配し、C57BL/6::ICRのF1を実験に用いることで安定した攻撃行動の観察が行えるようになった。一方、新たにモデル動物として加えたスナネズミは社会的コンフリクトにより攻撃性が上昇する傾向がみられた。マウスに比べスナネズミは攻撃行動が安定しており、物理的攻撃行動に加えて音声威嚇による攻撃性の発露も観察されるた。スナネズミではオスよりメスの方が優位に攻撃行動が観察された。また出産経験ありのメスは有意に高頻度に威嚇音声を発することを確認した。高音域での発声は攻撃行動と負の関係にあり、低音域の発声は攻撃性と正の関係にあった。これらの結果からスナネズミは社会性の関連を調べる上で非常に良いモデル動物である事が分かった。今後は遺伝子改変マウスとICRとのF1を用いた研究と、スナネズミを用いた研究とを比較検討する事で研究の推進を図る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
スナネズミにおいて、メスの方がオスよりも攻撃的であることを明らかにした。加えて出産という社会的経験が攻撃行動に加えて威嚇音声発声にも大きな影響を及ぼすことを明らかにした。これらの結果は社会的ストレスと攻撃行動の関連を明らかにするための実験モデル作成に大きな進展をもたらしたと考えている。加えてC57BL/6マウスとICRマウスのF1を用いることでマウスの攻撃行動も安定して観察できるようになった。以上より、当研究計画はおおむね順調に進捗していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
スナネズミにおいてはメスの方がより攻撃行動を表出しやすい傾向があり、社会的経験によって大きく変化することが明らかになったので、様々な社会的ストレスを負荷し、攻撃行動の変化を確認する。また威嚇音声の表出と物理的攻撃行動の表出を担う神経回路がどれくらい重なっているのかを明らかにする。加えて遺伝子改変マウスを用いて攻撃行動とストレスをつなぐ神経回路を同定する。
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Causes of Carryover |
今年度はCOVID-19感染蔓延により一部の実験の遂行に遅れが生じた。全体としては順調に計画は進んだが、遂行できなかった実験を次年度に繰り越して行う。
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