2022 Fiscal Year Research-status Report
拡散時間を用いた組織微細構造イメージング:筋萎縮性側索硬化症での検討
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21K07629
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
神谷 昂平 東邦大学, 医学部, 講師 (30749825)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
花城 里依 東邦大学, 医学部, 助教 (10866693)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 拡散MRI / 微細構造イメージング / 筋萎縮性側索硬化症 / 拡散時間 / 白質モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までに、拡散時間を用いた頭部MRI解析については、当初仮説を立てていたような結果は得られなかったことが分かっている(少なくとも現在可能な拡散時間の範囲においては、筋萎縮性側索硬化症(ALS)による効果量は拡散時間によらず一定で、拡散時間を変化させてデータサンプリングをすることの臨床的有用性が見いだせなかった)。 拡散時間以外のデータに対して、拡散尖度イメージング(DKI)や脳ネットワーク、皮質厚、T1/T2(ミエリンマップ)の解析を行い(令和4年4月-6月)、主に運動野を中心にALSでの有意な変化を認めた。ただし、これらの比較的conventionalな撮影・解析については既に大規模・縦断的な研究の報告が多数あり、それらの結果を再現しているに留まるため、論文採択に至れなかった。打開のため、更に機能的MRIと併用した解析を現在遂行中である(令和4年12月-令和5年5月)。 また、上記解析過程の副産物として、拡散MRIのデータ前処理の違いによって解析結果に大きな差異を生じることが分かった。これに関して、国際磁気共鳴医学会(ISMRM2023、令和5年6月)に採択され、発表予定である。 拡散時間に関しては当初期待した成果を得られなかったため、候補に挙げていた別の軸での(b-tensor encoding, multi-TE)撮影プロトコル策定を新MRI装置で現在行っている(令和5年3-5月)。前装置ではハードウェアの限界によって実施困難もしくは非現実的な撮影時間となっていたが、患者での実施が現実的なライン(10-15分)にまで撮影時間を短縮できる見込みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
疾患/健常群ともに、コロナ禍による来院忌避や疾患の進行等の理由によって予定の症例数を撮影できていない。また、拡散時間による解析について、当初仮説を立てていたような有用な結果は得られなかった。計画を修正し、PGSE法の拡散MRI解析によって投稿を目指しているが、当該の比較的conventionalな撮影・解析については既により大きなコホートでの報告が多数あり、論文採択に至れなかった。打開のため、機能的MRIの解析を追加で実施中である。 疾患群の2度目以降のデータ(縦断的解析用)について、1回めに経験したスキャン時間の長さや頻回の来院への忌避、疾患の進行等の理由によって、合計で4症例しか撮影が行えておらず、今後実施できる可能性も低い。 拡散時間以外の先進的データサンプリング法の候補として、b-tensor encoding, multi-TEを当初計画で挙げている。前年度に順天堂大学放射線科の協力を得て検討したDDE(planar tensor encoding)について自施設装置への導入を試みたが、撮影時間の問題(DDEのみで20分超)で患者での実施は断念せざるをえなかった。令和5年3月より、順天堂大学と同じ機種が自施設に導入されており、b-tensor encoding, multi-TEでの研究用撮影プロトコルを策定している。現状は健常者でのテストスキャンまでだが、新装置によって撮影時間/患者負担の低減と信号雑音比の向上が見込めるため、新プロトコルでの患者リクルートを進めていく。 脊髄の拡散MRIについては、脂肪抑制の不良や拍動アーチファクトの問題が健常者のテストスキャンにおいて解決できておらず、実施できていない。これは現在までのところ、上記の新MRI装置においても同様。
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Strategy for Future Research Activity |
拡散時間については、これ以上のデータ取得や解析はハードウェアの制限によって難しい。これに関しては、令和5年に導入された新MRI装置においても同様である(他の撮影パラメータと違い、可能な拡散時間の幅は前装置とあまり変わらない)。よって、他の軸(b, b-tensor, TE)での成果を目指す。 取得済のPGSE法の拡散MRIデータについて、他のMRI解析(機能的MRI)との合わせ技によって、論文としての採択を目指す。 新MRI装置によって撮影時間/患者負担の低減と信号雑音比の向上が見込めるため、b-tensor encoding, multi-TEでの新撮影プロトコルについて、可能な限りの撮影時間短縮を行い、患者リクルートを進める。 脊髄の拡散MRIについては、引き続き脂肪抑制や拍動アーチファクトの問題に取り組む。ただし、装置ベンダーとも密に連絡をとり検討したものの、これは本課題というよりも脊髄MRI一般の問題であり、本課題内での解決は現実的にあまり期待できないため、優先度の低い目標とする。
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Causes of Carryover |
令和4年度においても国際学会(ISMRM 2022、ロンドン)はリモート参加となったため、予定していた旅費の支出が不要となった。予定していた解析用ワークステーションのアップグレードに関しては、ストレージの増設と、単純に解析に時間を費やすことによって対応できたため、その他の高額な部品(CPU、GPU)の購入は必ずしも必須でなくなった。 研究分担者が産休のため当該年度に活動が少なく、予定していた費用(英文校正・学会出張等)を使用しなかった。 令和5年度の国際学会(ISMRM 2023、トロント)は現地参加を予定しているが、円安の影響で当初予定額よりも旅費がかかる見込みである。また、令和5年度後半には、当初の予算計画においては計上されていない国際学会への現地参加(招待講演)の要請を受けており、それの旅費も支出する予定である。
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