2021 Fiscal Year Research-status Report
血友病Aインヒビター産生応答を制御する脾臓免疫ニッチの同定
Project/Area Number |
21K07825
|
Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
小田 朗永 奈良県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (80547703)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野上 恵嗣 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (50326328)
北畠 正大 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (60457588)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 脾臓 / 血友病A / インヒビター / プラズマ細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
血友病A(HA)に対する第8因子(FVIII)補充療法は、HA患者の出血を予防する主要な治療手段である。しかし補充療法を施した約30%の患者で、治療効果を大きく障害する抗FVIII中和抗体産生(インヒビター)が誘導される。しかしながらインヒビター産生誘導に関わるメカニズム及びその制御法については殆ど明らかになっていない。本申請研究は、インヒビター免疫応答プロセスにおける脾臓間葉系幹細胞の関与を細胞・分子レベルで明らかにする事を目的としている。これまで、血友病A補充療法による抗FVIII免疫応答プロセスで活性化される免疫細胞は、脾臓定住細胞である辺縁帯マクロファージ、辺縁帯B細胞、そして白脾髄の濾胞ヘルパーT細胞である事が報告されている。これらの知見から、抗FVIII免疫応答プロセスは、肺炎連鎖球菌などの血中抗原に対する応答と同様のプロセスを経ていると考えられる。Christina Hausl et alは2002年にrFVIII投与後のHAマウスで抗FVIII IgG形質細胞(FVIII-PC)が骨髄(BM)と脾臓の両方で検出されることを報告した。しかし、脾臓とBMを含む各リンパ系臓器のFVIII-PCが、それぞれどの程度インヒビターを産生するかは現在においても明らかにされていない。従って我々は、インヒビター産生に脾臓がどの程度関与しているかまず明らかにする。そして脾臓がインヒビター産生応答の主要なリンパ器官である事を示す事ができたなら、次は脾臓微小環境とインヒビター産生応答との相互作用に着目する。免疫応答とニッチを構成する微小環境との相互作用を明らかにする事は、血友病A補充療法によるインヒビター産生応答の解明に繋がるだけではなく、免疫学的にもこれからの研究分野であり、血中抗原に対する免疫応答機序への新たな知見及び治療戦略を提供できるものと確信している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにChristina Hausl et alは、rFVIII投与後のHAマウスで抗FVIII IgG形質細胞(FVIII-PC)が骨髄(BM)と脾臓の両方で検出されることを報告した。しかし、脾臓とBMを含む各リンパ系臓器のFVIII-PCが、それぞれどの程度インヒビターを産生するかは不明であった。今回、我々はrFVIIIを投与したHAマウスにおいて、どのリンパ系臓器がFVIII-PCの発生源として決定的な臓器であるかを明らかにすることを目的に実験を行った。方法としては、 HAマウスにrFVIIIまたはLPS+rFVIIIを静脈内注射した。いずれの投与においても、血清中のインヒビターの力価は、HAマウスの脾臓におけるFVIII PCの出現と一致した。脾臓摘出および先天性無脾臓症のHAマウスをrFVIIIまたはLPS+rFVIIIで処理すると、脾臓の喪失により阻害物質のレベルが約80%減少した。さらに、LPSとrFVIIIを投与したHAマウスの脾臓細胞あるいはBM細胞を、免疫不全マウスに移植すると、脾臓細胞を受け取ったマウスの血清中でのみ抗FVIII IgGが検出された。従って、脾臓はFVIII PCの初期産生源およびその増強に関与する主要なリンパ器官である事が明らかとなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後、インヒビター産生機構に関わる分子基盤を脾臓微小環境(ニッチ)の側面から解明することを試みる。具体的には、①脾臓原基形成マスター制御因子であり、脾臓間葉系幹細胞マーカーであるTlx1発現細胞を追跡可能な新規レポーターマウス; Tlx1CreERT2-Venusマウスを導入し、FVIII欠損下でTlx1発現細胞を半永久的に追跡(FVIII欠損Tlx1CreERT2-Venus:Rosa26-tdTomato)・時期特異的欠失(FVIII欠損Tlx1CreERT2-Venus:Rosa26-DTA)・脾臓髄外造血誘導(FVIII欠損Tlx1CreERT2-Venus:Rosa26-Tlx1 tg)・時期特異的Tlx1発現欠損(FVIII欠損Tlx1CreERT2-Venus/flox)させる事により脾臓ニッチと脾臓辺縁帯定住細胞との関係及びインヒビター産生への影響をin vivoで明らかにする。さらに、 免疫不全/血友病A(NOG HA)マウスへヒト臍帯血細胞移入する事により、ヒト免疫系を有するヒト化血友病マウスを作製した。このマウスを用いて、中和活性を有するヒト抗FVIII IgG抗体産生誘導を試みる。
|
Causes of Carryover |
脾臓微小環境とインヒビター産生の関与を調べるための、既述したレポーターマウスを現在作製中であり、これらの遺伝子組換えマウス作製完了後、順次実験を開始する予定である。
|
Research Products
(2 results)