2023 Fiscal Year Research-status Report
うっ血による肝細胞がんおよび転移性肝がん増殖機構の解明
Project/Area Number |
21K08014
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Research Institution | International University of Health and Welfare |
Principal Investigator |
大澤 陽介 国際医療福祉大学, 医学部, 教授 (60447787)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | うっ血肝 / 肝血管新生 / スフィンゴシン1リン酸 / 肝線維化 / 肝発がん |
Outline of Annual Research Achievements |
先行研究により、うっ血肝では肝がんおよび肝線維化が促進されることを明らかにした。そのメカニズムとしてスフィンゴシン1リン酸による肝細胞のERKの活性化シグナルが発がんに関与していることを明らかにした。マウスを用いた検討により、慢性のうっ血には発がんのイニシエーション効果と腫瘍増殖に関わるプロモーション効果の両者が働くことが示唆された。2021年度から引き続きイニシエーション効果のメカニズム解明のため変異解析を継続して施行したが、動物モデルにおいてはドライバー変異を同定することはできなかった。そこで、現在、ヒト検体を用いて変異解析を施行している。上述のようにプロモーション効果にはスフィンゴシン1リン酸が関与することを明らかにした。うっ血肝においては類洞内皮細胞の活性化が認められ、活性化類洞内皮細胞にスフィンゴシン1リン酸の産生酵素であるスフィンゴシンキナーゼの上昇が認められた。類洞内皮細胞の活性化は、C型肝炎および脂肪肝炎にも認められたことから、うっ血肝に特異的ではなく共通の肝がんプロモーションメカニズムである可能性が高い。また、スフィンゴシン1リン酸の上昇は肝線維化にも関与することを明らかにした。肝線維化と肝がんの関連については古くから知られているが、その両者に類洞血管内皮細胞の活性化が関与している可能性が示唆された。類洞血管内皮細胞の活性化がどの程度肝線維化や肝発がんに関わるのかについて、現在検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度同様、新型コロナウイルス患者様の治療に対するエフォートを増やしたため、研究のエフォートが減少した。新型コロナウイルス感染拡大のため、マウス施設の増設が延期になったことも、やや遅れた原因となった。5類に移行したことにより、診療体制がもとにもどりつつあり、臨床検体も集まってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
うっ血以外の肝疾患における肝線維化では、類洞内圧が上昇するため、局所的にうっ血肝と同様の刺激が種々の細胞に入るはずである。実際にうっ血肝以外の肝硬変・慢性肝炎において、類洞内皮細胞の活性化が認められた。現在、脂肪肝炎については論文化を目指している。そこで、今後は血管内皮細胞と肝線維化・肝がんの関連について、多検体の臨床検体を用いて検討する予定である。スフィンゴシン1リン酸は一つの因子であるが、そのほかの関連について研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症が流行したため、診療のエフォートを増やす必要があり研究のエフォートが確保できなかった。また、研究設備や試薬についても物流の遅延があり、研究の進捗が遅れた。次年度に論文化および学会発表を終了させ、当初の目標を完遂する予定。
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