2021 Fiscal Year Research-status Report
気道粘膜防御能の脆弱性改善によるCOPD増悪抑制のための新規治療法開発
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21K08148
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
玉田 勉 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (80396473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 康司 東北大学, 大学病院, 助教 (70633725)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 気道分泌 / COPD / 粘膜防御能 / 脆弱性 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会の高齢化とともにCOPDによる入院や死亡者数は年々増加している。COPD増悪頻回例は喀痰の多い症例に多く、症状悪化、呼吸機能低下、死亡率上昇を来す。COPD増悪病態は、細菌・ウイルス感染および好酸球などが関与し、それぞれ長時間作用性気管支拡張薬および吸入ステロイドのより一定の増悪抑制効果が認められているものの、COPD増悪を未だ完全に制御できてはいない。COPDでは気道粘膜防御能が脆弱であり、現時点でその脆弱性を改善する根本的治療法が存在しないことが要因である。本研究の主題は、気道感染に伴うCOPD増悪予防に対する包括的治療戦略として、①気道粘膜防御能の脆弱性に影響する質的変化の特定、②新鮮気道分泌液の特性最適化による脆弱性の改善、③全てのCOPD増悪予防を可能とする新規治療法の開発である。申請者はこれまでに、病原微生物由来抗原がToll様受容体(TLR)を介して気道分泌に異常な量的変化を引き起こしCOPD増悪に関与し得ることを報告している。気道粘膜防御能の維持には気道分泌腺からのHCO3-分泌によるpH調節や抗菌活性保持などの質的特性の最適化が重要である。本研究ではこの質的異常と気道粘膜防御能脆弱性との関連を明らかにし、細菌やウイルスに対する易感染性を改善する治療薬開発への基礎を提供する。感染に伴うCOPD増悪やICS投与中の気道感染を制御することで、全てのCOPD増悪予防を目的とした安全で有効な新規治療法の確立と早期臨床応用を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度は我々が開発したブタ気管粘膜面での新鮮分泌液の可視化システムを利用して、定常状態(ACh単独)に加えて炎症惹起物質のLPS投与下での分泌速度と分泌液pHの測定を繰り返してきた。特にLABAあるいはLABA/LAMA併用での影響など概ね予定通りのプロトコルで統計学的に十分な解析ができるレベルのデータ数を得て、その一部を欧州生理学雑誌に報告した。気道分泌腺管腔側に普遍的に多く発現しHCO3-分泌の中心であるCFTRチャンネルがLPS投与下で機能不全および発現量の低下を生じて分泌液pHの酸性化が生じること、またCFTR特異的阻害薬でも同様の分泌液pH酸性化を認めることを示した。またACh単独ではCl-分泌の中心であるCaCCチャンネルが活性化するとともに細胞内カルシウム上昇が上記CFTRの機能低下を惹起する可能性について、LABAやLAMAを用いた検討で示唆された。現在は並行して上記LABAによる効果が、気道上皮線毛輸送運動の観察および周波数、振幅などにどの程度影響するかも含めて既存の高速度カメラ付き顕微鏡システムを用いた予備実験を重ねている。本研究の主題であるCOPDにおける気道粘膜防御能の脆弱性の定量化、気道被覆液の質的正常化を可能とする新規治療法の確立に向けて、今後更なる研究を発展させる基盤を構築し、重要な知見を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、既に構築に成功している新鮮分泌液のリアルタイム観察および分泌解析システムを用いてブタ気管(中枢気道)の健常状態およびCOPD増悪類似条件における新鮮気道分泌液質的特性変化の相異を確認する。分泌液の質的変化はpH特異的蛍光色素SNARF-1、イオン交換樹脂含有微小電極で解析する。宿主側が有する主なpH調節分子としてCFTRからのHCO3-分泌、プロトンポンプからのH+分泌などを想定し、外的調節因子としてウイルスや細菌成分であるTLRsリガンド、LABA、LAMA、両者併用、マクロライド系抗菌薬、強力な還元物質や抗エラスターゼ効果を有する物質などを想定して解析を行う。令和5年度は、既に保有している高解像度・高速度カメラ付顕微鏡観察システムを用いた粘液線毛輸送能の評価に加えて、抗菌蛋白活性やsIgA分泌の定量化、細菌増殖阻害実験など多方面からの解析を行い、粘膜防御能脆弱化メカニズムの評価を行う。COPD増悪は末梢気道が主座であることから、末梢気道の粘膜環境の変化を捉えるために、ブタ全肺から末梢気道を選択的に単離してリアルタイムにpH測定が可能なシステムの構築も新たに行う。さらに、ヒト手術検体の中枢気道および末梢気道を用いて、ブタ気道で得られた変化の再現性を証明することも含め、新規治療薬開発への基礎を提供する。以上のような検討から得られた結果を取りまとめ成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
COPD病態を想定した炎症惹起状態での気道分泌液特性の観察が、既存の試薬および機器を用いてスムーズに進み、予定より試薬等の購入が少なく済んだため。また、研究基盤整備の一環で令和4年度に使用する予定の線毛運動観察用実体顕微鏡システム(SZX10)一式を購入予定であったが、今年度は我々が保有するブタ気管粘膜面での新鮮分泌液の可視化システムを用いた実験に注力したことから、購入せずとも研究の遂行が可能であった。上記システムは次年度に購入し、測定を行う予定である。
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Research Products
(12 results)