2022 Fiscal Year Research-status Report
気道粘膜防御能の脆弱性改善によるCOPD増悪抑制のための新規治療法開発
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21K08148
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
玉田 勉 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (80396473)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 康司 東北大学, 大学病院, 助教 (70633725)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 気道分泌 / COPD / 粘膜防御能 / 脆弱性 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会の高齢化が加速を続けるとともにCOPDによる入院や死亡者数は年々増加している。COPD増悪頻回例は喀痰の多い症例に多く、症状悪化、呼吸機能低下、死亡率上昇のほか、本人や家族への労働生産性の低下や医療費増加をもたらす。COPD増悪病態は、細菌・ウイルス感染および好酸球などが関与し、それぞれ長時間作用性気管支拡張薬および吸入ステロイドのより一定の増悪抑制効果が認められているものの、COPD増悪を未だ完全に制御できてはいない。COPD増悪に関わる医療費は年間約6,000億円とCOPD全体の約75%を占めるとの試算もある。2019年から開始された国の費用対効果評価制度においてもCOPD治療薬が評価対象となるなど、COPD疾患予後の改善に加え医療資源の有効活用・医療費抑制のためにも、COPD増悪抑制は今後の治療戦略において急務である。COPDでは気道粘膜防御能が脆弱であり、現時点でその脆弱性を改善する根本的治療法が存在しないことが要因の一つである。本研究の主題は、気道感染に伴うCOPD増悪予防に対する包括的治療戦略として、①気道粘膜防御能の脆弱性に影響する質的変化の特定、②新鮮気道分泌液の特性最適化による脆弱性の改善、③全てのCOPD増悪予防を可能とする新規治療法の開発である。研究代表者らによるこれまでの研究実績から、気道粘膜防御能の向上・維持には気道分泌腺からのHCO3-分泌によるpH調節や抗菌活性保持などの質的特性の最適化が重要であることが明らかにされている。本研究ではこの質的異常と気道粘膜防御能脆弱性との関連を明らかにし、細菌やウイルスに対する易感染性を改善する治療薬開発への基礎を提供する。感染に伴うCOPD増悪やICS投与中の気道感染を制御することで、全てのCOPD増悪予防を目的とした安全で有効な新規治療法の確立と早期臨床応用を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和4年度は、中枢および末梢気道の線毛運動に伴う粘液繊毛輸送能の測定を蛍光マイクロビーズによって測定することが可能な蛍光実態顕微鏡撮影システムを構築すること平衡して、我々が以前に開発したブタ気管粘膜面での新鮮分泌液の可視化システムを利用した新鮮気道分泌液の量的および質的調節機序について、定常状態(ACh単独)と炎症状態 下(ACh+LPS)での解析を繰り返し行っている。特にLABAあるいはLABA/LAMA併用での影響など概ね予定通りのプロトコルで統計学的に十分な解析ができるレベルのデータ数を得て、その一部を欧州生理学雑誌に報告しつつ、国内学会等でも発表してきた。気道分泌腺管腔側に存在するCFTRチャンネルは刺激の種類によってCl-分泌だけでなくHCO3-分泌も行うことが知られているが、我々は、炎症惹起物質であるLPS存在下ではCFTRチャンネルからのHCO3-分泌が阻害されること、また、CFTRチャンネル分子の発現自体も低下することを初めて明らかにした。その結果として分泌液pHの病的酸性化が生じるが、、CFTR特異的阻害薬でも同様の分泌液pH酸性化を認めることも示した。気道分泌液の病的酸性化は、臨床的には粘膜に存在する種々の抗菌タンパクの活性を低下させ、ムチンの適切な粘調度が破綻して硬いムチンとなり、さらには気道被覆液の緩衝能(Buffer Capacity)が低下することで環境変化(気道感染、胃酸など)の変化に対して適切なpHを維持することが障害され、結果として気道易感染性や炎症の遷延からCOPD増悪に至ることが推定される。気道分泌液の正常化により、本研究の主題であるCOPDにおける気道粘膜防御能の脆弱性の改善を可能とする新規治療法の確立を推進する基盤を構築する。
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Strategy for Future Research Activity |
令和5年度は、新規に購入した蛍光実態顕微鏡撮影システムを用いて、中枢および末梢気道の線毛運動に伴う粘液繊毛輸送能の測定を蛍光マイクロビーズによって測定する。また、令和4年度から継続して行っている、既に構築済みの新鮮分泌液のリアルタイム観察実験系および分泌解析システムを用いてブタ気管(中枢気道)の健常状態およびCOPD増悪類似条件における新鮮気道分泌液質的特性変化の相異を確認する。分泌液の質的変化はpH特異的蛍光色素SNARF-1、イオン交換樹脂含有微小電極で解析する。宿主側が有する主なpH調節分子としてCFTRからのHCO3-分泌、プロトンポンプからのH+分泌などを想定し、外的調節因子としてウイルスや細菌成分であるTLRsリガンド、LABA、LAMA、両者併用、マクロライド系抗菌薬、強力な還元物質や抗エラスターゼ効果を有する物質などを想定して解析を行う。また、COPD増悪は末梢気道が主座であることから、近年注目されている末梢気道の評価のためにブタ末梢気道を含む肺胞領域の組織を用いて、気道被覆液のpH変化が末梢気道でどのような調節機序で行われているか、そのメカニズムを明らかにする。さらに、研究代表者らが保有する高解像度・高速度カメラ付顕微鏡観察システムを用いた末梢気道の粘液線毛運動の測定によるデータの補強も行う。分泌液の抗菌蛋白活性やsIgA分泌の定量化、細菌増殖阻害実験など多方面からの解析を行い、粘膜防御能脆弱化メカニズムの評価を行う。さらに、ヒト手術検体の中枢気道および末梢気道を用いて、ブタ気道で得られた変化の再現性を証明することも含め、新規治療薬開発への基礎を提供する。以上のような検討から得られた結果を取りまとめ成果の発表を行う。
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Causes of Carryover |
独立基盤形成支援により、本研究の重要な目的の一つである中枢および末梢気道の線毛運動に伴う粘液繊毛輸送能の測定について蛍光マイクロビーズを用いて測定する蛍光実態顕微鏡撮影システムの購入ができた。一方で、気道組織の免疫染色に必要な有機溶媒の使用時に不可欠のドラフトチャンバーの整備が令和4年度末に完了したものの支払いが間に合わず、次年度に支払いを行う予定である。また次年度は、分泌液の質的変化を測定するために必要な複数の試薬を購入し実験を加速させること、高解像度・高速度カメラ付顕微鏡観察システムを用いた末梢気道の粘液線毛運動の測定に必要な試薬の購入と実施、およびブタ中枢気道および末梢気道での調節機序の特徴などの解明に必要な機器等を購入する予定である。
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Research Products
(9 results)