2021 Fiscal Year Research-status Report
表皮IκBζを軸とした皮膚細菌叢異常による自己免疫疾患発症機構の解析
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21K08319
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水芦 政人 東北大学, 大学病院, 講師 (20400369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山崎 研志 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (40294798)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | IκBζ / SLE / 自己免疫疾患 / 皮膚細菌叢 / 黄色ブドウ球菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己免疫疾患は各諸臓器に慢性炎症を引き起こす症候群であり、その発症機序は完全には明らかになっていない。近年、腸内細菌叢の変化が自己免疫疾患の発症に寄与し、さらにループス腎炎の活動性には腸内細菌の異常が関連していることが判明した。このことから細菌叢を含めた環境因子が自己免疫疾患の発症に大いに関わることが示唆される。本研究では、予備実験において皮膚細菌叢の変化により自己免疫疾患を発症する可能性を示唆する結果が得られたため、表皮特異的IκBζ遺伝子欠損マウスを利用し自己免疫発症機序の解析を進めてきた。その結果として、表皮特異的IκBζ遺伝子欠損マウスの皮膚には黄色ブドウ球菌が対照マウスを比較して増生していることが判明し、その表皮特異的IκBζ遺伝子欠損マウスでは抗核抗体の産生が増加していた。さらに皮膚で増生している黄色ブドウ球菌は抗菌薬の投与より減少し、それに伴い表皮特異的IκBζ遺伝子欠損マウスでは抗核抗体の産生は減少した。このことから皮膚細菌叢の自己免疫応答への関わりが示唆された。抗菌薬投与では、腸内細菌叢まで影響を受けてしまうので、次に黄色ブドウ球菌を慢性的に皮膚に塗布することで定着させるモデルを作成した。その結果として、黄色ブドウ球菌を塗布した表皮特異的IκBζ遺伝子欠損マウスでは抗核抗体の産生が高まり、腎障害も呈することが判明した。抗核抗体の産生と腎障害があることから、SLEの特異抗体を検討してみたところ、抗dsDNA抗体や抗Sm抗体も上昇することが判明した。このことから今年度において皮膚細菌叢のバランスの破綻によって促される黄色ブドウ球菌の増生が自己免疫応答に関与することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展していると判断する。マウスに抗菌薬の投与もしくは皮膚に慢性的に黄色ブドウ球菌を塗布するモデルを表皮特異的IκBζ遺伝子欠損マウスに応用することで、皮膚細菌叢が自己免疫応答に関与することを示すことができた。また、現在行っている実験では黄色ブドウ球菌を2週間という短期での塗布において、皮膚での免疫応答性を確認しており、再現性はまだ取れていないが黄色ブドウ球菌の皮膚への塗布によって関わるリンパ球の性状を探索している状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、現在行っている短期黄色ブドウ球菌の皮膚投与による皮膚への影響の解析を行っていく。好中球やTh17細胞の関与が見いだせているので、これらの免疫細胞の活性化因子を検討していく。また候補因子はすでに見つかっており、今年度におこなった長期黄色ブドウ球菌皮膚塗布による自己免疫応答を、この候補因子を阻害することによって抑制しうるのかを検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度に予定していた実験の一部が次年度に繰越となったので、今年度使用予定だった試薬・薬剤の注文の一部が不要となった。次年度には必要となるため、次年度使用額に計上した。
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Research Products
(1 results)