2021 Fiscal Year Research-status Report
炎症性サイトカインIL-18を標的とした難治性炎症疾患に対する抗体治療の基盤研究
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21K08438
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
浦野 健 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 教授 (70293701)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加美野 宏樹 島根大学, 学術研究院医学・看護学系, 特任助教 (00625692)
杉浦 智子 島根大学, 医学部, 特別協力研究員 (60647402)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 炎症性サイトカイン / インターロイキン-18 / 難治性炎症疾患 / 抗体治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
インターロイキン(Interleukin, IL)はリンパ球やマクロファージなどが分泌するタンパク質の一種で、これまでに30種類以上が同定されている。産生されたインターロイキンは標的細胞(主にT細胞やB細胞、マクロファージ)が持つ特異的な受容体に結合し、シグナルを伝えることで炎症誘導/抑制といった生理作用を引き起こす。 IL-18は、IL-1β、IL-6やTNF-αなどと共に、炎症や感染防御に重要な役割を果たす実働分子である。繰り返す高熱発作を主な主症状とし、自然免疫制御異常により発症する比較的新しい疾患概念である“自己炎症性疾患”をはじめ、炎症性腸炎、自己免疫疾患や生活習慣病、神経変性疾患などさまざまな難治性炎症疾患と密接に関連していることが知られている。 近年、IL-18が関与する炎症性疾患の多くが“インフラマソーム”と呼ばれる細胞内センサーの活性化と関連している可能性が示唆され、病態解明の手がかりとして注目されている。インフラマソームは、細菌感染などで生じる外因性物質や尿酸結晶・コレステロール結晶などの内因性物質を認識し、タンパク質分解酵素であるカスペース1を活性化する細胞内タンパク質複合体である。活性化されたカスペース1はプロ体IL-18(1-193)からN末端を切断分離し、活性型IL-18(37-193)に転換する。 申請者らはカスペース1で切断されたヒトIL-18活性化断端を特異的に認識し、極めて結合親和性の高い、機能阻害のできるマウスモノクローナル抗体を作製した。本研究の学術的「問い」は非常にシンプルで、IL-18の関与が示唆されている難治性炎症疾患である1)炎症性腸炎(潰瘍性大腸炎・クローン病)、および2)マクロファージ活性化症候群において本当にIL-18が病因として関与しているのか?その問いをモデル動物の治療実験で検証し、実臨床に繋げたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請者はヒトIL-18を免疫して、ヒトIL-18の機能阻害のできる、極めて結合親和性の高いマウスモノクローナル抗体11-4.1を作製した。11-4.1の認識部位を決定したところ、マウスIL-18とは完全には一致しておらず交差反応していることが判明した。また、申請者が現有しているヒトIL-18の活性化断端のみを認識し、機能阻害するモノクローナル抗体 9-10.2は、ヒトとマウスで活性型断端配列が異なるため、マウス活性型 IL-18を認識・阻害することができなかった。そのため、マウスを使ったモデル実験系をより正確に遂行するためには、マウスIL-18の活性化断端のみを認識し、機能阻害できるモノクローナル抗体を作製する必要がある。そのため、ヒトIL-18の活性型断端のみを認識するモノクローナル抗体を作製した時と同様に、マウスIL-18の活性型断端ペプチドを用いて、常法に従って、マウスIL-18の活性型断端を特異的に認識するモノクローナル抗体を2種類作製した。これらの抗体を用いて、IL-18の関与が示唆されている難治性炎症疾患である1)炎症性腸炎(潰瘍性大腸炎・クローン病)、および2)マクロファージ活性化症候群のモデルマウスに対して治療実験を開始した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度作製したマウスIL-18の活性型断端を特異的に認識するモノクローナル抗体を用いて、IL-18の関与が示唆されている難治性炎症疾患である1)炎症性腸炎(潰瘍性大腸炎・クローン病)、および2)マクロファージ活性化症候群のモデルマウスに対して治療実験を引き続き行い、モデル動物における治療実験で効果を検証し、実臨床に繋げたい。
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Research Products
(9 results)