2021 Fiscal Year Research-status Report
新興リケッチア症・日本紅斑熱における重症化回避のための治療法確立
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21K08488
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
岩崎 博道 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 教授 (10242588)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲井 邦博 福井大学, 学術研究院医学系部門, 准教授 (30313745)
廣田 智哉 福井大学, 学術研究院医学系部門(附属病院部), 助教 (30742845)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | リケッチア感染症 / サイトカイン / ニューキノロン / TACE / 日本紅斑熱 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内の日本紅斑熱の年間発生報告は、422例(2020年集計)と過去最大となった。同じリケッチア感染症のつつが虫病に迫る勢いで増加している。日本紅斑熱は2019年に13例の死亡例が確認され、死亡率は4.1% (13/318例)に及んだ。重症日本紅斑熱の治療として近年、ミノサイクリン(MINO)に加え、ニューキノロン系薬が併用投与される。本研究ではニューキノロン系薬の重症化抑止に対する有効性について検討した。 サイトカイン・ケモカインを産生する実験系(LPS刺激によるTHP-1細胞)において、複数のニューキノロン系薬(レボフロキサシン:LVFX、シプロフロキサシン:CPFX、シタフロキサシン:STFX等)を用いてサイトカイン・ケモカイン産生の制御およびその機序について検討した。50μg/mlのニューキノロン系薬がTNF-α産生抑制を示した。対照に比較しLVFX 75.9%, CPFX 52.3%, STFX 27.0%と、それぞれ抑制された。このほかIL-8, IP-10, MCP-1, MIP-1αおよびMIP-1βも有意に産生抑制を示した。TNF-α産生の抑制効果が最も表れたSTFXでは、抗TNF-α抗体を用いたflow cytometry解析の結果から、細胞からのTNF-αの放出が抑制されていることが示された。STFXはTACE (TNF-α converting enzyme)のリン酸化およびその活性を抑制したことによりTNF-αの細胞外への放出を減じたと考えられ、その結果、上清中のTNF-α濃度を低下させたと考えられた。サイトカインストームにある日本紅斑熱の重症例において、MINOとともにニューキノロン系薬がサイトカイン・ケモカインの産生抑制に関与し、病状改善および救命に関与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
重症の日本紅斑熱に対するテトラサイクリン系薬とニューキノロン系薬の併用が、経験的に有効であるとの報告がみられる。日本紅斑熱の重症化の機序が十分に解明されてはいないが、背景の一部にはサイトカイン産生の過剰なサイトカインストームがあることが推定される。テトラサイクリン系薬に、この過剰なサイトカイン産生を抑制する機序は明らかにされているが、ニューキノロン系薬にもサイトカインやケモカインの産生を抑制することが示され、重症化した日本紅斑熱の救命のための一助となる機序が示唆された。抗菌薬の重症化回避のための新たな標準療法の確立を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
テトラサイクリン系薬およびニューキノロン系薬それぞれの日本紅斑熱の重症化回避のための様々な機序を明らかにする。日本紅斑熱症例の疫学的解析も進め、未だ解決されていない患者救命のための標準治療を提案する。
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