2022 Fiscal Year Research-status Report
セレノプロテインPの褐色脂肪細胞における発現制御機構と分化作用の解明
Project/Area Number |
21K08572
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高山 浩昭 金沢大学, 総合技術部(医), 技術職員 (90725227)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | セレノプロテインP / 酸化ストレス / 還元ストレス / 褐色脂肪細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、野生型 (WT) ならびにSelenop欠損マウスから単離したstromal vascular fraction (SVF) を用いて、セレノプロテインPが褐色脂肪細胞分化に及ぼす影響を検討した。その結果、Selenop欠損マウス由来SVFから分化した初代培養褐色脂肪細胞では、代表的な褐色脂肪細胞マーカー遺伝子であるUcp1 mRNA発現が低下傾向にあり、またUCP1タンパク質発現は有意に低下していることが明らかになった。加えて、WTマウス由来SVFから分化した初代培養褐色脂肪細胞を用いたsiRNAによるSelenopノックダウン実験では、ノックダウン細胞において褐色脂肪細胞分化後期での有意な細胞数の減少を認めた。これらの結果は、前年度の実績から考察した「セレノプロテインPが褐色脂肪細胞分化において重要な働きをしている」ことを裏付けている。一方で、全身Selenop欠損マウスの褐色脂肪組織でのUCP1発現はWTマウスと変化がないことから、in vivoでは何らかの代償機構の存在が考えられた。 我々はこれまでに、成熟した褐色脂肪細胞ではSelenop欠損によってノルアドレナリン誘導性の熱産生が亢進することを報告した(Cell Reports 2022)。セレノプロテインPは褐色脂肪細胞分化には促進的に作用するが、成熟褐色脂肪細胞での熱産生には抑制的に働く。それぞれの褐色脂肪細胞分化過程におけるセレノプロテインP機能の解明にはさらなる検討を要する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分化過程におけるSelenop promoter活性を測定するため、褐色脂肪細胞株であるT37i細胞の使用を検討した。しかしながら、T37i細胞は初代培養褐色脂肪細胞とSelenop遺伝子発現挙動が異なり、分化前よりも分化後においてSelenop発現が低下した。このことから生理的なSelenop発現挙動を反映しないと判断して使用を中止した。そのためSelenop promoter活性を評価できなかった。 SePタンパク質の精製について、純度を高めるための手順の検討に時間を要したため、想定した実験を行うことができなかった。高純度高活性のSeP精製条件の確立には成功したため、次年度の実験は問題無く実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
精製SePタンパク質を用いて、SeP投与が褐色脂肪分化に及ぼす影響を検討する。 初代培養褐色脂肪細胞を用いて、分化過程におけるSelenop promoter活性の評価を実施する。 現在のSelenop欠損マウスは不完全なSelenop mRNAが残存している。今年度に樹立予定である完全にSelenop mRNAを欠損したマウスのSVFを用いて、WTと比べて褐色脂肪細胞機能に差異があるか検討する。
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Causes of Carryover |
計画的に研究を遂行した結果、88,824円の繰越金が生じた。繰越金は次年度の試薬消耗品費として使用する。
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