2021 Fiscal Year Research-status Report
臓器間ネットワークによる膵α細胞新生機構と代謝制御の解明
Project/Area Number |
21K08581
|
Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
奥屋 茂 山口大学, 教育・学生支援機構, 教授 (20214083)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田部 勝也 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (00397994)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 膵α細胞 / 神経ネットワーク / 交感神経系 / グルカゴン |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で、短期間の低炭水化物/高蛋白食(LC/HP食)負荷による栄養・代謝変化に対する膵内分泌細胞の急性応答として、肝臓を起点とする神経ネットワークを介した膵α細胞量制御機構の存在が明らかとなった。そこで、本研究では、マウスを用いて以下のようないくつかの実験を行った。 まず、短期間のLC/HP食で誘導される膵α細胞を免疫組織学的に解析した。新生グルカゴン陽性細胞は主に膵管近傍に局在し、転写因子のPax6が強発現する一方で、抗MafB抗体による染色性は非常に乏しくMafB低発現であることが推察された。すなわち、新生細胞は膵管近傍に存在が想定される多能性分化能を有する前駆細胞に由来する可能性が考えられた。この局在は交感神経の分布と一致しており、6-OHDAを用いたノルアドレナリン作動性神経の除神経により膵α細胞新生が完全に抑制された。これら事実に基づき、交感神経活性化の中枢経路について視床および視床下部、脳幹に局在する神経核群の活性化をFosB蛋白発現に基づき免疫組織学的に解析した。その結果、延髄孤束核、最後野、縫線核の活性化が明らかとなった。一方、LC/HP食負荷時の栄養代謝面での変化を網羅的に検討するためメタボローム解析を試みたところ、肝グリコーゲン含量低下に続くタイミングで、糖新生系の中間代謝産物の増加を認めた。肝臓における代謝変化と膵α細胞の挙動との関連性は更なる検討を要するが、迷走神経肝臓枝選択的切断によりLC/HP食負荷で誘導される膵α細胞増加が消失する結果より、肝臓を起点とする迷走神経求心路中枢の延髄孤束核、交感神経駆動ニューロンが存在する縫線核を介した臓器連関経路が解明された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
マウスを用いた動物実験を中心に、予定した研究を適宜遂行中である。短期間のLC/HP食負荷で誘導される膵α細胞増加(新生)が、①肝臓でのグリコーゲン含量低下により引き起こされる代謝変化に由来する可能性、②膵内の交感神経終末の存在部位である、膵管近傍の内分泌前駆細胞から由来する可能性、③肝臓⇒迷走神経求心路⇒延髄孤束核---縫線核⇒交感神経前運動ニューロン⇒交感神経遠心路を介して制御される現象である可能性、をすでに明らかにしている。
|
Strategy for Future Research Activity |
短期間のLC/HP食に誘導される膵α細胞は、その局在から膵管近傍に存在する多能性分化能を有する前駆細胞から分化新生していると考えられる。新生グルカゴン陽性細胞の特徴を膵α細胞分化マーカーとなる種々転写因子の発現とともに、細胞増殖能を免疫組織染色により検討を進める。メタボローム解析についても、迷走神経遮断マウスでの検討も含めて再検討する予定である。さらには、神経ネットワークの解析を進めるとともに、LC/HP食の急性効果における食事内容、特に高蛋白負荷の影響を確認するため、コントロール食とLC/HP食摂餌下でのマウス血中の“アミノ酸解析”も予定している。
|
Causes of Carryover |
研究を効率良く実施でき、物品・試薬購入費が予定より少額となった。コロナ禍での移動制限により、予定していた学会参加のための旅費が不要となった。翌年度請求額と合わせて、測定キット購入費用・消耗品費としてさらに効率良く使用する予定である。また、令和4年度は、成果発表や研究関連情報収集を目的としての学会への参加費を計上する。
|
-
[Journal Article] Importance of Intestinal Environment and Cellular Plasticity of Islets in the Development of Postpancreatectomy Diabetes2021
Author(s)
Fukuda T, Bouchi R, Takeuchi T, Amo-Shiinoki K, Kudo A, Tanaka S, Tanabe M, Akashi T, Hirayama K, Odamaki T, Igarashi M, Kimura I, Tanabe K, Tanizawa Y, Yamada T, Ogawa Y
-
Journal Title
Diabetes Care
Volume: 44
Pages: 1002-1011
DOI
Peer Reviewed / Open Access
-
-