2021 Fiscal Year Research-status Report
幹細胞表面特異的糖鎖を標的とした膵癌の新規治療法の開発
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21K08764
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
五味 不二也 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (40205620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
進士 誠一 日本医科大学, 医学部, 助教 (80409193)
佐々木 紀彦 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (80639063)
石渡 俊行 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (90203041)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | nestin / 発現細胞 / geneticin |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、癌細胞の多様性(heterogeneity)が注目され、特に少数の「癌幹細胞」が「自己複製能」と、「多分化能」を有しており、癌の再発、転移に重要な役割を果たしていると考えられている。癌幹細胞は通常は細胞増殖能が低く、抗癌剤の排泄能が高いことから抗癌剤に耐性である。膵癌の癌幹細胞マーカーの中でnestinは、膵癌の極めて有望な早期診断および治療標的と考えられている。しかし一方でnestinは細胞内骨格タンパクであるため、これを標的とした診断法・治療法の開発は容易ではなく、臨床応用に繋がる研究は未だ進んでいない。細胞表面に存在する糖鎖が幹細胞や癌細胞の動態に関与し、CA-19-9などが腫瘍マーカーとなりうる有用な分子であることは広く知られている。 まず、ヒトnestin全長を得て、発現vectorpAcGFP N1および、pDsRed E2N1に挿入した。 我々は膵癌細胞株を8種類使用しているが、nestinの発現の低い膵癌細胞株から、PK-8および、PK-59、MIAPaCa-2にtransfectし、geneticinで選択をしてnestinおよび、空vector発現細胞を得た。残念ながら、タンパクの半減時間の問題なのか、GFPとDsRedの蛍光による選択はうまくいかなかったが、mRNA levelでnestinの発現をみたところ、PK-8で50~60倍、MIAPaCa-2で11-26倍の発現を確認した。 これらの細胞の内、PK-8(pAcGFP1N1)を用い、細胞増殖、遊走、浸潤能力の測定をWST8、Boyden chamber、Boyden chmber+matrigelにより測定したところ、nestin強制発現細胞の細胞増殖能はやや上昇し、遊走能は有意に上昇した。しかし、浸潤能は変化しなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
がん幹細胞特異的な表面糖鎖を検討するため、幹細胞マーカーであるnestinをpAcGFP1N1およびpDsRedE2N1にいれて、がん細胞株MIAPaCa-2,PK-8,PK-59にtransfectした。その後geneticinにより安定発現細胞の選択を行った。PK-8細胞に、pAcGFP1N1でnestinを強制発現した細胞の遊走能は有意に上昇したが、増殖能、浸潤能は変わず、はっきっりとした細胞の特性の変化は見られなかった。当初計画では、nestinと共発現する蛍光により、nestin発現細胞を選択する予定であった。が、それはうまくいっていない。しかしながら、細胞におけるnestinの発現増強はmRNAで十分に増加していることを確認しており、それらの細胞を用い細胞増殖、遊走、浸潤能力の測定をWST8、Boyden chamber、Boyden chmber+matrigelにより測定した。残念ながら、研究室として免疫不全マウスを用いる状況にはなっておらず動物を用いた実験はできていないが、in vitroで同等の実験を行っている。 また、細胞は凍結保存しており、これを材料としてこの先を進められる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画では、nestinと共発現する蛍光により、nestin発現細胞を選択し細胞表面糖鎖を検討する予定であった。 しかし、geneticin選択後も蛍光を発する細胞は少なかった。この細胞のmRNAを調べたところ、nestinの発現は十分に高かった。 理由は不明であるが、蛍光による選択はあきらめ、mRNAの発現を確認した細胞をおこし、mRNAの発現を再確認した上で、がん幹細胞の得的表面糖鎖をみつけるために、レクチンアレイにより細胞表面糖鎖につての検討を行う予定である。レクチンマイクロアレイ解析により、nestin陽性細胞に特異的に反応するレクチンの発現プロファイルが明らかになれば、次にnestin陽性細胞の細胞レベルにおいて候補レクチンまたは糖鎖抗体を用いたフローサイトメトリー解析や免疫染色を行い、nestin陽性細胞に特異的な糖鎖発現を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
必要物品価格と予算額kとの差が生じたため。 必要物品購入額へ加算する。
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