2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K08847
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
筒井 健太 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (30534284)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
住友 直方 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (50231379)
千本松 孝明 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (70216563)
森 仁 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (50900148)
池田 礼史 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (80789529)
加藤 律史 埼玉医科大学, 医学部, 教授 (10286049)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心臓老化 / 心拍ゆらぎ / 老化性心不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年急増している心不全など心疾患の予後を改善するため、根本的原因である「心臓老化」を診断する手法の開発が求められる。私たちは、動物を用いた一連の研究で、安静時の心拍数ゆらぎ(Heart Rate Variability, HRV)データを心臓成分と自律神経成分へと非侵襲的に分離する手法を開発し、同機能によって得られた心臓成分が老化や心疾患と関連して変化することを見出した。動物実験による本成果をヒトに用いて発展させ、臨床応用を目指す。具体的には、日常診療の範囲内で洞結節機能評価のため自律神経ブロックを行う全年齢層の患者において、ブロック前後の心電図に含まれるHRV情報を解析し、同技術を基盤としたヒト心臓老化診断が可能かを検証する。
初年度は、その第一歩として、データ収集および解析方法の確立を行った。具体的には、本研究遂行に必要なシステムを構築し、その実用性を検証した。新規購入したノートパソコンおよびタブレットを用いて、既存の心電図データを高品位なデジタルデータとして書き出し、解析ソフトウェアPhysiozooで心拍ゆらぎの基礎的解析を行った。独自ソフトウェアを作成し、運用することで、半自動的に作動するデータ取得パイプラインを完成した。 データ取得の現状としては、当初3年で合計50例を目標としている。初年度は、幅広い年齢層から38例のデータを取得できた。目標症例数到達は十分可能と考える。さらに、先を見据えてホルター心電図のデジタルデータ取得と自動解析のパイプラインを開発した。将来的には、大量データの自動解析をミスなく行う自動システムの開発を視野に入れる。 共同研究者との研究打ち合わせを重ね、ヒトにおいても動物を用いた先行研究と同様な手法でMSE平面上で安静時心拍数HRVと固有心拍数HRVがどの程度相関するか議論を重ねている。 今後の課題は、ヒトにおける安静時心拍数HRVと固有心拍数HRVの関係とその老化性変化を明らかにすることである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通りに順調に進展している。これまで、本プロジェクトのために必要なコンピュータや記録システム、セキュアなデータパイプラインの構築を行った。これにより、データ収集プロセスが確立した。
データ収集は順調である。10歳未満の小児患者のものから70代の高齢者まで広く集めている。中間解析により、患者の覚醒状態が心拍ゆらぎに一定の影響を及ぼすことを確認した。この現象はこれまで経験的に周知の事実ではあるが、定量的かつ体系的にそれを解明した研究はおそらく無いと思われ、本研究課題の中での重要な課題と思われた。小児患者では手術中の覚醒安静状態の心電図を長時間記録するのは安静が保てないため不可能であるため、同一患者のホルター心電図を利用した。成人の場合は、手術開始直前の覚醒状態の安静時心電図、麻酔開始後の安静時心電図、薬物投与後の安静時心電図を一部利用した。これにより、成人も小児も「覚醒安静時、麻酔安静時、麻酔除神経時」の三段階を垂直的に検討できるようになった。
データ解析は順調である。当初仮説としていたMSE平面での解析では、特に短期変動成分において個人差が著明であった。その成分を除外しての解析を進める方向性と、周波数解析など異なるアプローチでのモデル確立を行う方向性が想定され、今後検討を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
データ収集を継続し、目標症例数到達を目指す。また、研究期間中にさらなる前向きデータ収集が継続できる可能性があり、データボリューム増大が期待される。モデル作成に十分なサンプル数に到達したと判断された場合は、以後の収集データをValidation cohortとして利用する。 得られたデータを基に、自律神経遮断前後での心拍揺らぎの変化を全年齢層でモデル化する。これまで動物実験で得られた知見とどのような共通点および差異が見られるか詳細に検討し、ヒトHRVの加齢に伴う変動パターンのうち最大公約数的な部分をモデル化する。 今後、得られたモデルを用いてValidation cohortでの検証を行う。
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Causes of Carryover |
コロナにより学会出張がなくなった。また、講師を招聘しての講演会も実施困難で延期している。今後、コロナ流行状況を考慮して、適宜予算を執行して、研究計画を遂行していく。
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