2022 Fiscal Year Research-status Report
Helicobacter cinaediの除菌による腹部大動脈瘤伸展抑制の検討
Project/Area Number |
21K08857
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
後藤 均 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (00400333)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 良太朗 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (00741745)
田島 悠太 東北大学, 大学病院, 助教 (90884908)
赤松 大二朗 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (40420012)
梅津 道久 東北大学, 大学病院, 助教 (00910647)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腹部大動脈瘤 / 拡大抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
腹部大動脈瘤(AAA)の治療は現在のところ外科的治療のみが確立されている。AAAの成因はまだ不明な点が多く、薬剤でAAAを抑制する試みはまだ成功していない。AAA発症の一因として以前から微生物の感染による炎症がトリガーになる可能性が報告されていたが、その原因となる微生物は同定されないままでいた。一方、近年、動脈硬化巣からHelicobacter cinaediが同定されるようになり新たな生活習慣病を起こす常在菌として注目されている。H.cinaediは培養による検出が難しくnested PCRでの検出系が確立されたのは最近のことである。H.cinaediはヒトに不顕性感染を起こし、動脈硬化の発症プロセスに関与する報告があることから、我々はH.cinaediがAAA発症のトリガーになっていないだろうかと考え、手術標本の瘤壁に対してnested PCR法によりH.cinaediの存在を評価した。その結果39例中23%にH.cinaediのDNAが検出され、また同個体の正常動脈からはH.cinaedi遺伝子が検出されないことから、H.cinaediは瘤形成に何らかの関わりがあるものと考えている。 そこで、本研究では以下のステップを経てAAAの薬剤による抑制ができるかを確認する。① AAA症例の血清を用いH.cinaedi抗体価の測定を行う。②小瘤径AAAのH.cinaedi陽性例を2群にわけ、片方には抗生剤の1週間投与により「除菌」を行う。もう一方はコントロールとする。③除菌群とコントロール群のAAAの拡大の経過を最低3年間追跡し「除菌」によりAAAの拡大が抑制できるかどうかを検討する。 AAAの発症には複雑な要因が関連すると考えられるが以上の方法が確立されれば一部のAAAに対しては薬剤によりその拡大を抑制する新しい治療選択になる可能性がある。現在のところ、研究計画を立案中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の実現に向けて研究計画の作成に時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は次の4段階に分けられる(1段階目は証明済み)。 ①動脈瘤からのH.cinaediの検出(終了):H.cinaediだけを特異的に検出できるプライマー(gyrB遺伝子)を用いたNested PCR法により、瘤壁内からH.cinaediを検出している(平均瘤径50mmの39例の患者を対象に実施し、約23%の患者が陽性であった)。 ②動脈瘤壁のH.cinaedi陽性症例の血清のH.cinaedi抗体価の測定:瘤壁中のH.cinaedi DNA陽性または陰性症例の血清を用いELISA法によりH.cinaedi抗体価を調べ採血による瘤壁H.cinaedi陽性が推測できるかどうかを検討する。 ③小瘤径AAA患者の血清抗体価によるH.cinaedi不顕性感染例の調査:AAA患者の血清H.cinaedi抗体価を調べAAA症例中の陽性率を確認する。 ④H.cinaedi陽性小瘤径AAA患者に対するH.cinaedi除菌の瘤拡大抑制効果の検討:H.cinaedi陽性の小瘤径(30-40mm)AAA患者を除菌群、非除菌群の2群に分けその後3年間の瘤拡大の状況を経過観察する。研究デザインはランダム化比較試験とし、AAA瘤径の標準偏差が5mm、3mm以上の差を効果ありとし、検出力を80%以上とすると最低サンプルサイズは24名となり、drop out症例も考慮し各群30名の登録を目標とする。除菌はH.pyroriの標準的除(Amoxicillin、Clarithromycinの1週間投与)とし、投与前後に血清抗体価を測定し除菌の効果を確認する。瘤径の評価は6ヶ月毎のCTによる画像評価とする。 現在のところ、ランダム化比較試験の実現に向けて関係部署を連携をとり、研究計画の立案を行っているところである。
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Causes of Carryover |
現在のところ、関係部署と連携を図って研究計画の立案を行っている段階である。従って、実質的な実行に至っておらず、そのため予定した使用額に達していない。今後、研究計画を速やかに立案して実行する。
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