2021 Fiscal Year Research-status Report
新規肺移植後免疫抑制療法の開発を目指した間葉系幹細胞由来の細胞外小胞の解析と応用
Project/Area Number |
21K08878
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
大石 久 東北大学, 大学病院, 講師 (60451580)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大河内 眞也 東北大学, 事業支援機構, 講師 (40375035)
野田 雅史 東北大学, 加齢医学研究所, 准教授 (70400356)
渡邉 龍秋 東北大学, 大学病院, 助教 (70636034)
平間 崇 東北大学, 大学病院, 助教 (80510338)
岡田 克典 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (90323104)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 肺移植 / 移植肺機能不全 / 急性拒絶反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
肺移植医療において最も深刻な問題の1つは、肺移植後の生存率である。国際心肺移植学会のレジストリレポートによれば、肺移植後の5年生存率は55%であり、他の臓器移植に比較し、予後は不良である。肺移植後慢性期(1年目以降)の死因のトップは、慢性拒絶反応であり(国際心肺移植学会レジストリレポート、図2)、近年は慢性移植肺機能不全(Chronic lung allograft dysfunction: CLAD)と呼ばれる。慢性的な拒絶反応がその病態に関与するとされているが、不明な点が多く、現在も有効な治療法は確立していない。年間多くの肺移植レシピエントがCLADにより死亡したり、再移植を要したりしている。 本研究は、間葉系幹細胞(Mesenchymal stromal cells; MSC)が有する抗炎症作用や免疫抑制作用に着目した研究である。さらに、我々はMSCから放出され、mRNAやmiRNAやタンパク質などを運び、細胞間コミュニケーションにおいて重要な役割を果たすとされている細胞外小胞(Extracellular vesicles; EVs)に着目し、MSCと同様な抗炎症作用や免疫抑制作用を有するか検討することを目的とした。2021年度(R3年度)は、MSC由来のEVsの解析方法の確立とMSCの培養方法の検討すること、さらに動物モデルを使用したパイロットスタディーを行うことを予定していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
MSC由来のEVsは、すでにいくつかの研究グループによりプロテオーム解析され、EVsには共通の成分があるとされながらも、EVs回収前のMSCの培養方法には多くの方法があり、回収されるタンパクにも多様性が生じている。我々は2021年度内(R3年度内)にEVs改修前のMSCの培養方法、EVsの回収・解析方法を確立すること、さらに動物モデルによるパイロットスタディーを行うことを予定していた。MSCは炎症性サイトカインであるTNF-αやIFN-γが高い環境に暴露されると、抗炎症作用をもったEVsが産生すると報告されている。我々は文献を参考にMSC培養を行い抗炎症サイトカインのうちIL-10のmRNAが多く含まれたEVsの回収を目指した。しかし、次年度使用額
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度(R3年度)に予定して実験はおおむね完遂できた。一方で、目標としたEVsの回収や動物モデルに対する予想された結果は得られていない。ひきつづき、EVsの回収方法の開発を行いつつも、下記の方策も進めていく予定である。 Multilineage-differentiating Stress Enduring (Muse)細胞という、成体の間葉系組織である皮膚、骨髄、脂肪組織などに存在し、腫瘍性を示さない新たなタイプの多能性幹細胞に着目し、肺移植後急性拒絶反応やCLADへの治療応用の可能性を探る。Muse細胞は間葉系幹細胞(MSC) の中の約1%を占め、幹細胞としての能力がきわだって高い細胞であることがこれまでの研究でわかっている。まずはパイロットスタディーを行いMuse細胞の投与方法(投与細胞数や投与タイミング)を確立し、Muse細胞の肺移植後急性拒絶反応やCLADの発症抑制効果や治療効果を検討したいと考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度(R3年度)に予定して実験はおおむね完遂できた。一方で、目標としたEVsの回収や動物モデル(パイロットスタディー)において、予想された結果は得られていない。よって、本実験で使用するような匹数の実験動物の購入がなかったため、当該年度の実支出額が少なくなった。 パイロットスタディーの結果を踏まえ、「今後の研究の推進方策」のような実験計画の修正を行う予定であり、次年度は新たなパイロットスタディーさらには本実験で使用する実験動物の購入が予定されるため、この次年度使用額が有効に利用される見込みである。
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