2022 Fiscal Year Research-status Report
Electrical stimulation therapy for residual proximal upper limb tremor after thalamotomy
Project/Area Number |
21K09099
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
押野 悟 大阪大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (40403050)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
谷 直樹 大阪大学, 大学院医学系研究科, 助教 (20598370)
藤田 祐也 大阪大学, 大学院医学系研究科, 招へい教員 (20839097) [Withdrawn]
何 馨 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任研究員 (40895273)
三浦 慎平 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (50869716) [Withdrawn]
細見 晃一 大阪大学, 大学院医学系研究科, 特任講師(常勤) (70533800)
江村 拓人 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (70891505)
木本 優希 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (10889645)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 機能神経外科 / 振戦 / 電気刺激療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
振戦は頻度の高い不随意運動で、進行すると書字や食事などの日常生活動作にも支障をきたす。薬物治療の効果が乏しいため、医療機関を受診しない患者も少なくなかったが、近年、集束超音波(FUS)や定位的視床破壊術といった外科治療の効果が再認識され、我々の施設でも治療件数が増加している。 この外科治療では視床の腹側中間核という部位を小さく凝固するが、この神経核は筋の固有核が入力する部位といわれている。この部位を破壊することで振戦が軽減するメカニズムは不明であるが、上肢の屈筋と伸筋の間で形成された過剰な連携を弱めることで振戦が軽減すると推測される。しかし、視床腹側中間核を広範囲に凝固すれば、どのような振戦でも消失する訳ではなく、外科治療後も振戦が残存する例や、経過とともに再燃する例が一定数存在する。 それらの多くに観察される振戦は、上肢近位部を中心とした粗大なもので、特定の肢位で増強、軽減する特徴がある。例えば、腕を真っ直ぐ前に挙げた時には振戦はほぼ観察されないのに、肘を曲げ口元に手を持ってくると増悪するなどである。つまり、これら2つの肢位では上腕三頭筋や腕橈骨筋の緊張状態が異なり、それが振戦の出現や増悪に影響していると推察される。 本研究ではこの現象に注目し、上肢近位筋の緊張状態が振戦にどのように関連するか、そしてその緊張状態を調整することで振戦が軽減できないかを試みる。そのため、①振戦が軽減もしくは増悪する肢位とその際の振戦の変化を定量評価する、②特定の肢位での脳活動を脳磁図で解析する、③肢位に関与する上肢の筋に経皮的電気刺激を加え、その緊張状態を調整することで振戦への抑制効果を確かめる、の3項目を計画している。本研究で一定の成果が得られれば、低侵襲で実用的な振戦緩和法の開発に繋がると期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
振戦の定量評価を試行錯誤した結果、手背、前腕、上腕に回転加速度の慣性センサー(Xsens Awinda)を装着し、計測する手法を選択した。このセンサーでは前腕や上腕の長軸方向の2軸と垂直の軸の3軸での回転周波数や加速度と方向が記録でき、更にオフラインでパワースペクトラムを含む種々のパラメータが算出できる。令和4年度は計28例で安静時と振戦が増強、もしくは減弱する肢位、臨床評価スケールに含まれる渦巻き描画や書字の際での各部位の回転加速度が計測できた。その結果、現時点では前腕の角速度パワー(deg**2/Hz)が臨床スコアと最も強い相関を示している。 次いで、近位筋の経皮電気刺激で書字の際の振戦が軽減するかを確認したところ、約70%の患者で「少し書きやすい気がする」とのコメントが得られた。上腕三頭筋、もしくは腕橈骨筋の刺激が有効な例がやや多いが個人差が大きく、至適刺激部位の同定には至っていない。代表例では上腕三頭筋と前腕屈筋群の同時刺激で、上腕長軸に対する回転角速度パワーが64.4%、前腕長軸に対する角速度パワーが80.1%も減少し、上腕のピーク周波数が4.5Hzから2.5Hzに低下する効果が観察された。 脳磁図は、昨年度と同様、検査室でのコロナ感染対策に懸念点があったため、外来患者には実施せず、入院患者3例のみの計測となった。更に計測で用いる電極連結部が脆弱化していることが判明し、新規に購入できないものであったため、当初予定していた項目を減らしての計測となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
回転加速度センサーを用いた計測、誘発筋電系を用いた電気刺激ともに手技が安定し、延べ28例で問題なくデータが収集できた。令和5年度も同手法で継続してデータ収集を図りたい。 一方、解析面では3つのセンサーが各々3軸のデータを有しているため算出できるパラメータがかなり多い。まずは振戦の重症度を的確に反映するものを同定したいが、口元で手を保持する動作と、手が接地する書字とでは、振戦の強い部位や速度、軸方向が異なるため、各々の動作でパラメータを個別に検討しなければならず、更なる検討を要する。 電気刺激の効果は個人差が大きいため、より多数例で実施したい。また同一例でも異なる部位で複数回試行し、振戦の抑制効果を検証する予定である。 脳磁図計測はコロナ禍の影響で遅れての開始となったが、更に機器の老朽化の問題が判明した。上記2つの計測、評価が安定して進行しているため、脳磁図では当初の予定よりも検査項目を減らし、感覚及び運動誘発磁界を中心に計測する予定とした。本研究は、電気刺激による筋緊張の変化が感覚経路を介して視床腹側中間核に伝播することで、手術と類似の振戦抑制効果が得られるという仮説のもと実施している。そのため、脳磁図ではこの運動、感覚経路の状態を手術等による影響の有無も含めて評価し、臨床症状や電気刺激の効果と対比するように検討したい。
|
Causes of Carryover |
既存の誘発筋電図で電気刺激が遂行できたこと、高価な動画解析システムではなく回転加速度による定量解析に変更できたことから、それらの経費が予定より少なくなった。 それに加え、2022年度まではコロナ禍の影響で脳磁図が計測できなかったため、脳磁図用の経費(1件5万円)が繰り越された。2023年度はコロナ禍が終息し、外来での計測も可能となるため、脳磁図の件数が増える見込みである。その計測費用や消耗品にこれまでの繰り越し分が用いられる予定である。
|
Research Products
(6 results)