2023 Fiscal Year Annual Research Report
間質細胞との相互作用で前立腺がん細胞に発現するストマチンの発現機構と腫瘍抑制作用
Project/Area Number |
21K09419
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
佐藤 朗 滋賀医科大学, 医学部, 准教授 (70464302)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | Stomatin(ストマチン) / EphA3/7 / EphrinA-5 / 遺伝子発現制御 / 前立腺がん / がん微小環境 / 細胞間相互作用 / ERK |
Outline of Annual Research Achievements |
前立腺がん細胞が周囲の間質細胞と接触すると、どのようにがん細胞の振舞いが変化するのかという点に着目し、間質細胞との細胞間接触によってがん細胞で発現が増加する遺伝子として、抗腫瘍作用を有する細胞膜裏打タンパク質Stomatin(ストマチン)を同定した (Cancer Res., 2021)。本研究の目的は、ストマチンの抗腫瘍作用の分子機構ならびにその発現制御機構、さらに、ヒト前立腺がん組織でのストマチン発現の病理学的意義を検討することである。 ストマチンの発現制御機構に関して、昨年度までにin silico解析とその後の分子生物学的解析から、前立腺がん細胞に特異的に高発現しているephrin-Ephシグナルのリガンドephrin-A5とその受容体EphA3及びEphA7によるがん細胞間で伝達されているシグナルが、ストマチンの発現を負に制御していることが明らかになった。さらに、間質細胞との混合培養では、前立腺がん細胞間で伝達されているephrin-Ephシグナルを間質細胞が物理的に阻害することで、ストマチンの発現が上昇することが判明した。本年度は、さらに生化学的解析を行い、前立腺がん細胞内では、活性化されたEphAシグナルが、ストマチンの発現に必要な細胞外シグナル伝達調節キナーゼ(ERK)シグナルを抑制すること、一方で、薬理学的にERKを活性化させるとストマチンの発現は上昇することが明らかになった。さらに、活性化ERKの下流のEtsファミリー転写因子ELK1とELK4が、ストマチンの発現を促進していることも見出した。以上のことから、前立腺がん細胞におけるEphAシグナルの活性化が、ストマチン発現を正に制御するERK-ELKシグナルを抑制することで、前立腺がん細胞ではストマチンの発現が抑制されていることが明らかになった。
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