2021 Fiscal Year Research-status Report
腎細胞癌におけるBACH1機能解析を基礎とした抗PD-1抗体抵抗性獲得機序の解明
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21K09426
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
武本 健士郎 広島大学, 病院(医), 医科診療医 (70887124)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小畠 浩平 広島大学, 病院(医), 助教 (10749998)
亭島 淳 広島大学, 医系科学研究科(医), 准教授 (20397962)
池田 健一郎 広島大学, 病院(医), 助教 (50624863)
神沼 修 広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 教授 (80342921)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腎細胞癌 / 酸化ストレス / 薬剤抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
腎細胞癌(renal cell carcinoma, RCC)は酸化ストレスが発癌危険因子であることが知られているが、その背景にある分子機構は不明な点が多い。そこで我々は、酸化ストレス応答に関与する転写因子の一つであるBTB domain and CNC homolog 1 (BACH1)に着目した。BACH1は活性酸素種の産生を促進し、抗酸化酵素を抑制する事で炎症を惹起するとされているが、RCCにおけるその役割は未知であり今回の研究のテーマとした。 臨床検体を用いたBACH1の機能解析のために当院にて施行した腎摘除術標本におけるBACH1の免疫染色を行っところ、BACH1陽性群では有意にhigh stageであり、生存率も低いことが判明した。また、BACH1陽性群では血清炎症性マーカーであるCRPおよびリンパ球好中球比が有意に高値であり、この結果はこれまで他に報告がなく新たな知見となった。 続いて、腎癌細胞株(786-O, Caki-1, ACHN)においてBACH1の分子機能解析(遊走能・浸潤能評価)を行った。腎癌細胞株においてBACH1をノックダウンした結果、遊走能および浸潤能の有意な低下を認めた。また、過剰発現株を作製し同検討を行ったところ、遊走能および浸潤能の有意な上昇を確認した。 BACH1は抗酸化酵素HO-1を抑制することで炎症を惹起することが知られており、腎癌における相互作用を解析した。BACH1過剰発現株において、HO-1発現は有意に抑制され、BACH1抑制下で亢進した。また、腎摘除術標本におけるHO-1の免疫染色では、HO-1陰性症例は有意にpT stageが高く、生命予後が悪い傾向にあった。 これらの結果から、BACH1は腎癌において抗酸化酵素HO-1を抑制することで炎症を惹起しその悪性度亢進に寄与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床検体を用いたBACH1解析のために当院にて施行した腎摘除術標本におけるBACH1の免疫染色を行った。その結果、BACH1陽性群では有意にhigh stageであり、生存率も低いことが判明した。また、BACH1陽性群では血清炎症性マーカーであるCRPおよびリンパ球好中球比が有意に高値であり、この結果はこれまで他に報告がなく新たな知見となった。 続いて、腎癌細胞株(786-O, Caki-1, ACHN)においてBACH1の分子機能解析(遊走能・浸潤能評価)を行った。腎癌細胞株においてBACH1をノックダウンした結果、遊走能および浸潤能の有意な低下を認めた。また、過剰発現株を作製し同検討を行ったところ、遊走能および浸潤能の有意な上昇を確認した。 BACH1は下流にある抗酸化酵素HO-1を抑制することで炎症を惹起することが知られており、腎癌における相互作用を解析した。BACH1過剰発現株において、HO-1発現は有意に抑制され、BACH1抑制下で亢進した。また、腎摘除術標本におけるHO-1の免疫染色では、HO-1陰性症例は有意にpT stageが高く、生命予後が悪い傾向にあった。 これらの結果から、BACH1は腎癌において抗酸化酵素HO-1を抑制することで炎症を惹起しその悪性度亢進に寄与している可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点では、臨床検体を用いた解析およびin vitroでの分子機能解析を行った。今後の展望としては、マウスモデルを用いて生体内におけるBACH1の機能解析を予定している。 実際には、免疫不全マウスに786-OのBACH1過剰発現株および空ベクター導入株の2種類を皮下投与し、4-6週間程度腫瘍の増大を確認する。定期的に腫瘍のサイズを計測し比較検討を行い、生体内における増殖能の差を同定する。その後、腫瘍を採材し重量測定を行い増殖能の最終比較を行う。 また、採材腫瘍から蛋白抽出を行い、腫瘍の浸潤能・遊走能・増殖能に関与する可能性のある蛋白の同定を行い、BACH1が腎癌の悪性度亢進に関与する具体的な経路や相互関連分子に関しても追加検討していく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度使用予定であったCRISPR-Cas9ベクターの購入が研究の進捗状況を鑑みて、来年度に持ち越しとなった。また、コロナウイルス蔓延のため学会参加が制限され、来年度への持ち越し金が生じた。来年度は当初予定していたCRISPR-Cas9ベクターの購入を予定し、マウスモデルにおける追加実験を予定している。
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