2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K09480
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
岡田 英孝 関西医科大学, 医学部, 教授 (80330182)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 子宮内膜 |
Outline of Annual Research Achievements |
性ステロイドホルモンであるプロゲスチン(黄体ホルモン)は、胚着床ならびに以後の妊娠維持に必要不可欠である。その標的組織である子宮内膜は、プロゲスチン作用により適切に分化(脱落膜化)して胚受容能を獲得している。すなわち、脱落膜化の意義を明確するには、プロゲスチンに制御される標的遺伝子の同定とその機能解析が重要となる。 最近、子宮内膜局所における低酸素環境が、着床現象に関与していることが注目されている。低酸素誘導因子HIF(Hypoxia inducible factor)は、低酸素刺激で細胞内に誘導される転写因子であり、細胞応答のマスターレギュレーターとして機能している。着床に適した子宮内膜の分化(脱落膜化)へのダイナミックな変化のメカニズムの解明には、性ステロイドホルモンの内分泌調整だけでなく、HIF-1シグナル経路を介した子宮内膜の機能解析が必要と考えられている。 患者の同意のもとに採取したヒト子宮内膜組織を、機械的および酵素的に融解して、ヒト子宮内膜間質細胞を分離培養した。子宮内膜の血管新生は、vascular endothelial growth factor(VEGF)、angiopoietin(ANGPT)1/2、fibroblast growth factor(FGF)などの血管新生因子により制御されている。これら因子の解析結果として、プロゲスチンは、ANGPT2を低下させるが、VEGFおよびANGPT1を変化させず、その結果ANGPT2/ANGPT1比が低下することを見出した。FGFファミリーを網羅的に解析したところ、唯一FGF9の発現量がプロゲスチン添加により有意に低下していた。塩化コバルトによる低酸素刺激により、HIF-1α蛋白発現は6時間後にピークを認めた。さらに、低酸素刺激により、VEGFやグルコース輸送体(GLUT)1の発現が促進されるのを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト子宮内膜において、内分泌環境と低酸素環境により、局所因子がどのように制御されているかを細胞・分子生物学的に検討し、そこに関連する因子を同定することを目的としている。プロゲスチンや低酸素誘導薬の添加培養後、回収した細胞からRNAを抽出・精製し、ゲノムDNAの混入を防ぐためにDNase処理をしたRNAを用いてcDNAを作製してリアルタイムPCRを施行した。 短期間で急速に変化する子宮内膜は、生体内で最も顕著な血管新生の場となっている。血管新生を制御する血管新生因子の調節機構や役割を解明する必要がある。これまで子宮内膜機能に関与している血管新生因子が、プロゲスチンにより特異的に制御されていることを明らかにした。さらに、塩化コバルトの低酸素刺激により、HIF-1、VEGF、GLUT1の発現調節していることを確認でき、計画は順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
子宮内膜機能に関与している血管新生因子が、プロゲスチンにより特異的に制御されていることが判明したことより、プロゲスチンに直接制御される転写制御因子群の一つであるHeart and neural crest derivatives-expressed transcript 2(HAND2)との関連に着目して解析を行う。今後、低酸素刺激について、ANGPT1/2などの他の血管新生因子の発現調整やGlutファミリーの発現変化について調べる。
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Causes of Carryover |
血管新生因子や子宮内膜局所因子が、プロゲスチンや低酸素刺激により、リアルタイムPCRの結果で、特異的に制御されていることが判明した。当初の予定より、多くの因子について、リアルタイムPCRで詳細な評価を実施する必要が生じた。研究の遂行上、培養液中への分泌量についてはELISA法で評価し、蛋白質を抽出してWestern blot法を用いて発現動態を定量的に解析する必要がある。次年度に、本年度解析した因子について、分泌量や蛋白量を解析する予定である。
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