2021 Fiscal Year Research-status Report
新規難聴原因遺伝子SLC12A2の分子病態解析と治療標的の探索
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21K09598
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Research Institution | 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター) |
Principal Investigator |
務台 英樹 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), その他部局等, 研究員 (60415891)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奈良 清光 独立行政法人国立病院機構(東京医療センター臨床研究センター), 聴覚・平衡覚研究部, 研究員 (40260327)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 難聴 / 原因遺伝子 / ゲノム編集 / 疾患モデル動物 / スプライシング |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者は、新規難聴原因遺伝子SLC12A2 の同定に成功し報告してきた。病的変異の全ては機能不明の特定領域 (exon 21) に局在している。本研究の第一の目的は動物・細胞モデルを用いたSLC12A2 による難聴発症の分子機構の解明である。 令和3年度はSlc12a2 exon 21スプライス変異を導入したマウスの表現型解析を実施した。2系統(tm1, tm2と称する)それぞれの変異ヘテロ、ホモのマウスに対しABR閾値を計測した。また蝸牛および他組織における exon 21 (+), (-) Slc12a2アイソフォームの発現量変比較等を実施し、Slc12a2 欠損マウスの過去の報告と比較した。Tm1, tm2系統間で変異ホモ個体のABR閾値の上昇に差が生じることが明らかとなり、また変異導入マウス蝸牛におけるSlc12a2転写産物が難聴患者で検出された病的変異とも異なることが明らかとなった。これは今回導入した変異以外に位置する、exon 21上のわずかな塩基の差異がスプライシングに及ぼす影響によるものと考えられた。また免疫組織化学的解析およびsurface preparation用に、蝸牛組織を4%パラホルムアルデヒドで固定し、現在個体数を蓄積中である。一部の組織については形態観察も実施し、Slc12a2 欠損マウスとは異なる病理学的特徴も観察された。 これらの表現型の差異をさらに詳細に解析する目的で、文部科学省先進ゲノム支援の助成を得て、難聴を示すtm2/tm2および聴力正常の野生型ホモ4週齢 (FVB/NJ系統)のマウス各3頭より全蝸牛組織から抽出した高品質total RNAを用い、RNA-sequencingを実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
文部科学省 新学術領域研究「先進ゲノム支援」(16H06279 (PAGS))の協力を得て、モデルマウスの蝸牛組織を用いた網羅的遺伝子発現量解析をRNA-seqにより実施したため。 その過程で当初の計画外の試薬類の購入が必要となりいくつかの実験が次年度繰越しとなった一方で、多くの解析手法の習得が新たになされ、代表者の研究能力がさらに向上した。次年度以降の詳細な解析により、Slc12a2を原因とする遺伝性難聴の発症分子病態解明が大きく進展されると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、RNA-sequencing結果解析を続行し、Slc12a2 exon 21スプライス変異による蝸牛組織に対して発現量が変動する遺伝子群と生物学的意義を考察し、注目する複数の遺伝子についてqRT-PCRによる検証および免疫組織学的解析を実施する。SLC12A2を原因とする難聴DFNA78の患者は先天性難聴を呈する。マウスでは聴力発現が生後12-13日頃であることから、生後1日、12日の各時期における蝸牛組織像も確認する。さらに予測された分子病態に基づく細胞実験、並びに蝸牛内電位の測定も実施し、令和5年度中に論文を作成・投稿する予定である。 また、本研究の第二の目的は、この研究過程で検出される、SLC12A2 を原因とする難聴の治療標的の同定である。tm2/tm2マウス蝸牛における発現量変動遺伝子群のなかからターゲット候補を見出し、それに即した発症予防・治療などにつながる実験系の構築を目指す予定である。
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Causes of Carryover |
本研究で計画している免疫組織化学的手法に用いる抗体、細胞実験で用いる培地などに多額の経費がかかると予想し予算計上していたが、平成3年度はRNA-seqによる網羅的遺伝子発現解析を優先したため、これらに用いる組織、導入ベクターなどについては準備するのみにとどまり実験を実施しなかった。また新型コロナ禍の影響により国際学会への発表と渡航を取りやめた。このため合計では使用額にやや余剰が生じた。平成4年度以降は免疫組織化学的解析、細胞実験を実施する予定である。
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Research Products
(5 results)