2021 Fiscal Year Research-status Report
口腔内細菌叢の網羅的解析による口腔粘膜障害への臨床アプローチ
Project/Area Number |
21K10185
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
平野 慶子 岡山大学, 大学病院, 助教 (50335618)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲野 道代 (松本道代) 岡山大学, 医歯薬学域, 教授 (30359848)
後藤 花奈 岡山大学, 大学病院, 助教 (90846495)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 小児がん / 造血幹細胞移植 / 口腔粘膜障害 / 口腔レンサ球菌歯周病原生菌 / 周術期 / う蝕 / 歯周病原生菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
小児がんの治療過程においては、造血幹細胞移植等の化学療法や放射線治療により免疫能が減少し口腔粘膜障害が多発する。また、口腔粘膜障害が消失後も口腔乾燥や粘膜の拘縮、口腔衛生状態の悪化等の原因で重度の齲蝕や歯肉炎を発症するが現在のところ、その原因は明らかとなっていない。本研究では、造血幹細胞移植を受ける小児患者から採取した移植前後の口腔検体を用いて口腔細菌叢における菌の定量化とその構成比、生物学的性状の比較検討ならびに病原タンパクの発現を検討する。 岡山大学病院倫理審査委員会の承認を得て、保護者より同意が得られた造血幹細胞移植を受ける患児から移植前、移植1か月後、移植3か月後の口腔内検体として歯垢と唾液採取を行っている。 現在のところ5名の患児の口腔内検体を採取しており、その内訳は移植3か月後までが3名、移植1か月後までが1名、移植前までが1名である。移植前の時点での平均年齢は8歳0か月(4歳4か月~11歳3か月)であった。移植3か月後までの口腔内検体を採取した3名の患児では口腔レンサ球菌数は経時的に増加が観察され、ミュ-タンスレンサ球菌は2名において移植3か月後でのみ認めた。乳酸桿菌は1名において移植1か月後のみに認められた。さらに分離できた菌を用いて各菌種の16SrRNAを増幅する特異的なプライマーを用いて、菌種の同定を行ったところ、歯周病病原細菌については移植前で、Capnocytophaga ochracea, Prevotella nigrescens, Campirobactr rectusを認め、移植1か月後にCapnocytophaga ochracea, Prevotella nigrescens 検出された。今後は、これらの菌についての病原性を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
岡山大学病院小児科との連携も取れており、小児歯科を受診する小児がん患者が増加し、各ステージ毎のサンプル数も定期的に確保することができている。採取したサンプルも随時、PCR法による菌の同定を行っており、概ね予定通りに遂行できていると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も同様に小児科との連携をを元に、造血幹細胞移植の患児のサンプリング数を増やしていく予定である。 また当初の予定通り各細菌の分離同定が終了した後には、リアルタイム PCR 法を用いて、それぞれの口腔内検体に含まれる各菌の定量を行う。また、分離した菌に関しては以下の1)~3)までの分析を行う予定である。 1) バイオフィルム形成能 分離した菌に関して、バイオフィルム形成能の評価を行う。評価は量的評価および構造評価を行う。 2)プロテオーム解析 得られた菌を用いて、プロテオーム解析を行う。ショットガン解析にて変化したタンパクの同定を行う。必要であれば、リン酸化ショットガン解析を行いさらに詳細な分析を行う。この解析により、口腔内の環境悪化に関連するタンパクを同定する。 3)歯周病原生菌の細胞傷害性 細胞培養系による病原性の評価を HE 細胞および Ca9-22 細胞株を用いて行う。
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Causes of Carryover |
患者のサンプリングを経時的に採取する予定であるが、分離した菌の解析の分析が遅れており、使用する試薬等の品質管理を考慮して次年度に購入することを計画しているため。
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