2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K10249
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
篠田 壽 東北大学, 歯学研究科, 名誉教授 (80014025)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木野 康志 東北大学, 理学研究科, 教授 (00272005)
千葉 美麗 東北大学, 歯学研究科, 講師 (10236820)
清水 良央 東北大学, 歯学研究科, 助教 (30302152)
高橋 温 東北大学, 大学病院, 准教授 (50333828)
鈴木 敏彦 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (70261518)
岡 壽崇 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, 原子力科学研究部門 原子力科学研究所 原子力基礎工学研究センター, 研究副主幹 (70339745)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 福島第一原発事故 / 乳歯 / 外部被ばく量 / 内部被ばく量 / ESR法 / 炭酸ラジカル / イメージングプレート / Sr-90 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度においては、福島県在住小児より、永久歯との交換時期に自然脱落する乳歯を福島県歯科医師会の協力のもとに収集し、管理・アーカイブ化した。令和3年度においては前年からのコロナ禍が継続し、歯科医院を来訪する小児の数が激減したことから、収集できた乳歯数は、2022年1月末現在、200本弱にとどまった。本年度の研究においては、収集した乳歯を、原発事故前に形成された乳歯、原発事故時に形成途上にあった乳歯、原発事故後に形成された乳歯の3群に分け、乳歯中の放射線量(QL値)をイメージングプレートを用いてスクリーニングした。現時点においては、これら3群のQL値に差は認められず、原発事故により福島県在住小児の乳歯放射線量に増加はなかったことが示唆された。また、本年度における基礎的な研究として、QL値の発生に寄与する歯質中の放射性核種にはどのようなものがあるかについて検討した。その結果、歯の中にはウラン壊変系列やトリウム壊変系列の娘核種、40K等の自然放射性核種があり、それらに加えて、137Csや90Sr等の人工放射性核種があることが明らかとなった。現在、原発事故により、福島在住小児の乳歯の放射線量の上昇はないことから、歯の中のこれら核種の濃度には大きな変動がなかったものと考えられる。歯のQL値の上昇は、歯の中の放射性物質の濃度の増加を意味し、ひいては個体の内部被ばく量の増加を示唆する。今年度の結果のみから結論することは難しいが、歯の中の放射線量からみる限り、原発事故による福島県在住小児の見るべき内部被ばく量の増加はなかったものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
福島県在住小児からの乳歯の収集は、コロナ禍でやや遅れているが、必要数は確保できている。歯から内部被ばく状況、外部被ばく状況を個体レベルで評価するのがこの研究の主目的であるが、内部被ばく量を推定するためのイメージングプレート法、外部被ばく量を推定するためのESR法は、今年度までの研究からほぼ確立できており、研究を進めるうえでの大きな障害はないと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
歯が放射線に被ばくした時、歯質中には炭酸ラジカルが発生し、それらは、半永久的に歯質中に保持される。放射線への被ばく量と歯の中に発生する炭酸ラジカル量には比例関係があることから、歯質中に保持されている炭酸ラジカル量を測定することにより、個体の外部被ばく量を推定することが可能である。我々は、歯の中の炭酸ラジカル量をESR法により測定し、原発事故後の福島県在住小児の外部被ばく量を、収集した乳歯を用いて明らかにすることを予定している。今年度は、ESR法に用いるエナメル質サンプルの調製法の改善に取り組み、多数のサンプルを効率的に調整できる方法を開発することができた。来年度以降、この方法を用いて、収集した乳歯から、内部被ばく量のみならず、外部被ばく量も併せ、推定することに注力する。
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Causes of Carryover |
今年度においては、福島県在住小児より乳歯の提供を受けるために福島県歯科医師会にそのための費用の一部を本研究予算から50万程度支出することを予定していた。しかしその乳歯収集事業が、コロナ禍のため、縮小せざるを得ない事態となったこと、また、縮小した乳歯収集事業も、他の予算からカバーすることができることとなり、本研究費からの支出を行うことなく済ませることができた。今年度未使用の予算は、来年度以降に繰り越し、ヒト乳歯や、基礎研究用に収集したニホンザルやアライグマの歯の分析を依頼するための人件費と、歯のオートラジオグラフ標本作製や、ESR標本作成用の費用に充てることを予定している。
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Research Products
(12 results)