2021 Fiscal Year Research-status Report
継続的な農薬の投与は脂肪由来幹細胞のキャラクターを変化させるのか
Project/Area Number |
21K10413
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
小笠原 準悦 旭川医科大学, 医学部, 講師 (20415110)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 脂肪由来幹細胞 / 細胞分化能 / 農薬 / 3T3-L1脂肪細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満を背景とした2型糖尿病の罹患者は、開発途上国を中心に増え続けている。開発途上国では、安価なために、すでに先進諸国で使用が禁止されている難分解性有機汚染物質(農薬)を使用している地域が存在するが、農薬が2型糖尿病の誘導因子となりうるかについては明確なエビヴィンスが得られていない。 本研究は、脂肪由来幹細胞の分化能へ及ぼす農薬の影響について検討することを目的としている。さらに、動物個体の表現型とその個体から単離した脂肪由来幹細胞の解析を基に、得られたエヴィデンスを細胞株へと擬態することによってメカニズムの解明を試みる点に独自性がある。 予備実験の結果として、有機塩素化合物系農薬であるヘキサクロロシクロヘキサン(HCH)の投与は、成熟型3T3-L1脂肪細胞にインスリン抵抗性を引き起こすことを見出している。しかしながら、3T3-L1脂肪細胞の成熟脂肪細胞への分化過程において、HCHがどのような影響を及ぼすかについては全く分かっていない。脂肪由来幹細胞も前駆脂肪細胞であるため、動物への投与実験を行う際の予備実験の側面からも、本研究の遂行は重要である。 非添加群と比較して、HCHの添加により、細胞内の中性脂肪が顕著に蓄積した成熟型3T3-L1脂肪細胞へと分化し、これは脂肪合成酵素の発現を促すことによって生じることが明らかとなった。本研究の結果は、HCHは2型糖尿病の一因である肥満化した脂肪細胞を生み出すことを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
動物実験への応用に際して、なるべく少ない数の個体を使用することを視野に入れたため、培養細胞を使用して予備実験を行うことを追加した。そのため本来の計画より少々遅れているようにみえるが、成熟化過程へのHCHの添加は、非添加群と比較して成熟型3T3-L1脂肪細胞のキャラクターを変化させることを見出したため、今後の研究のなかで大変有意義な知見が得られている。今後は、こうしたデータを基に、さらに本研究を発展させたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
プライマリー脂肪組織から脂肪由来幹細胞を単離し、分化誘導を介した初代培養を行うことによって、3T3-L1脂肪細胞の研究で得られたデータとの関係性を検討し、エヴィデンスを強固なものにしようと考えている。その応用として、長期間の経口投与による白色脂肪組織の変化や、そこから得られた脂肪由来幹細胞のキャラクターの変化などについて検討し、生理作用を調節する内在性因子の同定などに発展させたいと考えている。
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Causes of Carryover |
本来予定していた動物実験が、新型コロナウイルス感染症にともなう動物舎の入場制限などの影響もあり培養細胞実験へとシフトしたため、動物実験に関する試薬などの購入が無かったため次年度使用額が生じた。次年度は、新たにクリーンベンチの購入などが生じるため、機器の整備などに使用する予定である。
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