2023 Fiscal Year Research-status Report
我が国の看護教育に種々の理論を導入しようとした人々の語りから形成する学問史の研究
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21K10643
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Research Institution | Tokyo Ariake University of Medical and Health Sciences |
Principal Investigator |
北島 泰子 東京有明医療大学, 看護学部, 教授 (30434434)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前田 樹海 東京有明医療大学, 看護学部, 教授 (80291574)
緒方 大樹 東京工業大学, 情報理工学院, 特任准教授 (80598037)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 看護理論 / 看護学史 / 聞き書き / 一般学問 / 看護学の特殊性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、我が国の看護教育に種々の看護理論を導入しようとした人々が直接語る言葉から看護の学問史を形成する研究である。2022年度までに当事者からなぜその理論を日本に導入しようとしたのか話を聞いた。その理由は既存の看護理論では説明がつかないような学問的問題に遭遇した、等ではなく翻訳者の選好に依るものが多かった。看護学には一般的に学問が発展していく過程である「理論モデルの構築、演繹、検証、理論モデルの改善、演繹、検証という循環」の繰り返しが行われていないと考えられた。そのため本研究の目的を達成するために2023年度は他の学問分野の専門家であり、かつ看護学を近くで見てきた方々にインタビューし、中からではなく外からの証言により日本に導入された看護理論のそれぞれが何を目的として導入されたのかを類推することとした。まず他学問の専門家から見ると看護学は非常に特殊な学問であるとのことであった。看護は応用科学なのか、応用科学であるとすれば何を基礎学問においているのか、学士号を持っていないのに修士号を持っている大学の教員が多くいる、等の他の学問分野では基本的な事項が看護学には欠けていたり、逆に他の学問分野では無い事項が看護学では散見されるなど看護学の特殊性が随所で確認された。本研究の根幹をなす看護理論に関する証言では、そもそも「理論」というものの捉えて方が違うのではないかという話があった。当初の本研究の目的は一般的な学問の発展の過程を基に計画されたものであることから、他学問の専門家にインタビューを重ねていく中で当初の目的を達成するのは困難極めることがわかってきた。しかしながら看護学の特殊性を浮き彫りにすることができたことから本年度も他学問の専門家へのインタビューを継続し、特殊な学問である看護学の中に存在する看護理論は学問の歴史の中でどのように捉えられてきたのかを考えていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、我が国の看護教育に種々の看護理論を導入しようとした人々が直接語る言葉から看護の学問史を形成する研究である。本研究の根幹をなす聞き書きは当初想定していたより数は少ないが実施できている。しかし、他学問の専門家へのインタビューをしたことによって看護学の特殊性が明らかになり、本研究が当初計画していたインタビュー内容を一般的な学問の発展過程を経ていない看護学に適用することは困難であることがわかってきた。看護学を他の学問と同列に扱うことができないことがわかったことから、研究の方法等に若干の修正が必要となった結果、研究全体の進捗が遅れていると言わざるを得ない状況にある。インタビューそのものは順調に進められているため今後も継続するが、看護理論については他の一般学問の理論というものの捉え方で考察することが難しく、よってまずは特殊な学問である看護学の中に存在する看護理論というものが学問の歴史の中でどのように捉えられてきたのかを考えていくこととする。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の根幹をなす看護理論に関する証言では、そもそも看護学では「理論」というものの捉え方が他の学問分野とは違うのではないかという話があった。当初の本研究の目的は一般的な学問の発展の過程を基に計画されたものであることから、他学問の専門家にインタビューを重ねていく中で当初の目的を達成するのは困難極めることがわかってきた。しかしながら看護学の特殊性を浮き彫りにすることができたことから本年度も他学問の専門家へのインタビューを継続し、特殊な学問である看護学の中に存在する看護理論は学問の歴史の中でどのように捉えられてきたのかを考えていきたい。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究費の多くはインタビューのための旅費と謝金であったが、当初の数よりインタビューの実施数が少なく次年度使用額が発生した。積極的なインタビューを継続していく所存である。
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