2022 Fiscal Year Research-status Report
精神障害を有する人が主体となる感染予防に関する教育プログラムの構築
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21K10785
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Research Institution | Tottori College of Nursing |
Principal Investigator |
中川 康江 鳥取看護大学, 看護学部, 准教授 (70761336)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
荒川 満枝 鳥取看護大学, 看護学部, 教授 (00363549)
遠藤 淑美 鳥取看護大学, 看護学部, 教授 (50279832) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 精神障害 / 当事者 / 感染予防教育プログラム / 細菌採取 |
Outline of Annual Research Achievements |
「研究の目的」:精神科病棟における感染予防対策は、現状においては医療従事者が中心となって行っている。本研究の「目的」は、精神障害を有する方(以下当事者と称す)が主体となって感染予防対策が行えるようになるための教育プログラムの構築を目指している。 「研究実施計画」:教育プログラムの構築期間は2021年から2023年の3年間と計画している。1年目には感染に関して当事者が感じている療養環境の状況、当事者の感染に関する思いや行動の傾向を把握することを目的に、当事者へのインタビューを行った。そしてインタビュー内容の分析をもとに、教育プログラムの作成を計画した。さらに1年目には作成した教育プログラムで当事者に感染に関する学習会と、学習会の前後の細菌の採取という介入を行った。2年目には、初回の介入によって見えてきた修正点を反映して再介入を計画していた。しかし再三の調整にもかかわらずCOVID-19の影響で叶わなかったため、3年目に再度介入後にその結果を評価すると計画している。 「具体的内容」: 修正した教育プログラムを用いて再介入を行いたいと調整を図った。 「当該年度に実施した研究の成果」「意義、重要性」:2022年度は、1年目に行った介入を、再度行いたいと調整を図ったが、COVID-19の影響でできなかった。これにより、改めて感染症によって病棟が受ける影響の大きさと共に本研究の意義を認識した。1年目に行った教育プログラムの介入と介入前後の菌の採取により、対象者の反応と細菌数の変動傾向を知ることができた。それにより、教育プログラムの再考と、細菌の採取方法などの具体的な修正内容を熟考する時間に出来たと考えている。2年目の再介入は叶わなかったが、3年目は評価分析の年としていたが、評価分析の前にもう一度修正をした教育プログラムと細菌採取の介入を行いたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目には、1年目に作成して一度介入を行った教育プログラムに修正をかけたもので再介入を行いたいと計画をしていた。このため何度か病棟へ調整をかけたが、COVID-19の影響で再介入ができなかった。しかし1年目に2年目の一部計画内容まで行えていたため、概ね順調に進展と考えている。 1年目の当事者に対する、感染に関するインタビューでは、当事者の感染症に対する気持ちや感染対策において病院や社会へ望むことを知ることができた。そのなかで、当事者であっても、「教えてもらったことはできる」「一般の人と同じように教えてほしい。」という感染症に関する知識欲や学習意欲についても知ることができた。そして当事者へのインタビュー結果の分析をもとに、感染予防教育プログラムを作成することができた。 また1年目には作成した教育プログラムを用いて精神科病棟にいる当事者に対して、感染予防に関する学習会と、学習会の前後に当事者の環境と手指の細菌数の調査という介入も行った。そして介入したことにより、教育プログラムの介入期間の再考、教育プログラム内の課題の徹底方法についてなど、具体的なプログラムの修正部分が明らかになった。加えて、細菌採取の間隔が空きすぎると細菌数の増加がみられる点と、当事者の周囲の環境測定は他者や清掃する人による影響も推察された。 以上の経過を踏まえ、1年目の介入結果を反映させて修正した感染予防に対する教育プログラムを用いた再度の介入結果を反映させることで、教育プログラムを完成とするべきと考えた。よって、3年目は作成した教育プログラムを用いた介入の結果の評価分析の年と計画していたが、まずは2年目にできなかった教育プログラムを用いた再介入を行い、その結果から評価を進めたいと考えている。 以上の理由より、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は3年計画の研究の最終年度となる。そのため、2年間かけて行ってきた当事者を主体とした感染に関する教育プログラムの作成と、それを用いて当事者の方へ感染予防に関する教育プログラムを用いて介入をした結果を、評価する年と位置付けている。ただ評価の前に2年間の実施の成果として、作成した教育プログラムの修正点と、介入及び細菌採取にあたっての環境調整の修正の必要性も明らかになった。 具体的には、教育プログラムの環境調整の再考についてである。初回の参加者が16名と多く、約2か月のコースを終えるまでに退院をされる方や症状変化される方など全回継続参加ができない方が多く、結局最終回まで継続参加できた方は6名であった。これより、継続してプログラムに参加できる対象者を安定的に確保することを目指し、1か月を目途に介入ができるように再考している。期間の短縮は、1回ずつの学習間隔の短縮にもなる。学習間隔の短縮は、細菌数が2週間の間隔を空けた後は増加傾向になったことより、学習間隔を2週間以内に反復する事は、新しい認知に基づいた行動の固定化に効果が得られると考えたためである。 教育プログラムの内容において修正点が生じたのは、認知行動療法に欠かせない「次回までの課題」の達成度が低いことへの対応である。当事者には各学習内容を記載した冊子を作製して全回を通して活用をしてもらった。その冊子において、課題のワークを4回の学習項目の後にまとめてつけていたが、各回の学習項目を復習される方は多かったが、後半部分を失念されている方が多かった。このため、各学習項目の続きにワークの記載場所を付けておいた方が、当事者の方へ意識づけられると考えた。 このように実際に介入したことで当事者の方の反応の傾向を知ることができた事は、2年間の成果と考えている。3年目は、修正点を反映した介入を行った後、評価を行っていきたい。
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Causes of Carryover |
2年目に再度細菌のサンプル採取と教育プログラムの介入を行う予定であった。しかしCOVID-19の影響で実施が叶わなかったため、3年目に再度教育プログラムの介入と細菌サンプルの採取の実施を予定している。 その際、細菌サンプルの採取担当を担っている研究分担者の勤務先が変更になることにともない、共同で研究を行う際には片道5万円程度の交通費が必要となった。教育プログラムは1回の介入にあたり、サンプル採取が2回必要となる。このため、再介入の共同作業に、約20万円の交通費が必要となる。そして残り5万円で、教育プログラムの再介入とサンプル採取の備品追加購入を計画している。 以上の理由により、次年度への使用額が生じている。
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