2021 Fiscal Year Research-status Report
重症心身障害児者の微細な反応を理解するための概念モデルの作成
Project/Area Number |
21K10871
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
横関 恵美子 四国大学, 看護学部, 講師 (50746279)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 耕司 四国大学, 経営情報学部, 教授 (70182623)
池本 有里 四国大学, 経営情報学部, 助教 (50612058)
木田 菊惠 四国大学, 看護学部, 教授 (90885352)
細川 康輝 四国大学, 経営情報学部, 准教授 (20341266)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 重症心身障害 / ストレス / 普段の状態 / 観測データ / 機械学習 / ニューラルネットワーク分析 / 重回帰分析 / ロジスティック回帰分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、意志疎通の難しい重症心身障害児者(以下、重症児者)を在宅で養育している家族が、重症児者の反応を理解できるようになることで、養育者の身体的・精神的・社会的負担の軽減につながることを目指すもので、これは同時にニーズや思いが伝わらないことによって受ける重症児者の苦痛を軽減することにつながる。そのために、本研究では、表情の変化から快・不快を読み取ることができる概念モデルを作成する。1年目の計画は、重症児者のストレス時の表情筋の変化を明らかにすることである。 コロナウイルス感染症の蔓延ため、重症児者のみならず言語フィードバックが可能な健康な成人からのデータ収集も進まなかった。そこで、これまでに収集していた重症児者のデータを分割して分析を進めることとした。それは、喀痰吸引、てんかん発作、訓練、移乗、口腔ケアなどの日常生活場面で、データ収集した重症児者7名の喀痰吸引とてんかん発作に焦点をあて分析した。 具体的には、快・不快が既知である1症例の反応について、ロジスティック回帰分析と重回帰分析、AI予測分析を行い、共通した説明変数を抽出した。そして、重症児者の快・不快について判断が難しい場合、心拍数を目的変数とした分析方法によって、重症児者の不快時の表情筋の動きを明らかにできることを示した。また、これらから抽出した特徴量を用いて、ニューラルネットワーク分析を行い、作成したストレス指標モデルの検証を行った。 また、てんかん発作については、発作がみられた日のみを観察しても、てんかん発作に気づくことは難しい。しかし、てんかん発作のみられた日と見られなかった日のデータによる重回帰分析、ニューラルネットワーク分析を行い、重症児者の日常生活の中でのデータを学習させることで、精度よくてんかん発作を予測発見できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目の計画として、まず不快時のストレス指標となる特徴量を検知することであったため、喀痰吸引、てんかん発作、訓練、移乗、口腔ケアなど日常生活場面を定点観測し、データ収集分析した。そして、喀痰吸引に起因するストレスとてんかん発作の予測について分析した。 まず、喀痰吸引については、快・不快が既知である1症例の反応について、ロジスティック回帰分析と重回帰分析、AI予測分析を行った結果、共通した説明変数を抽出した。そして、重症児者の快・不快について判断が難しい症例の場合についても、心拍数を目的変数とした分析方法によって、重症児者の不快時の表情筋の動きを明らかにできることを示した。その結果から、快・不快の状況予測が難しく、家族も看護師も確信が持てない3症例に対しても、喀痰吸引直後という共通した状況下のストレスを重回帰分析することで、共通した説明変数を抽出し、同時に重症児個々の相違点も確認できた。そして、これらの変数を用いて、ニューラルネットワーク分析を行い、作成したストレス指標モデルの検証を行った。 また、てんかん発作については、発作がみられた日のみを観察しても、てんかん発作に気づくことは難しいが、てんかん発作のみられた日と見られなかった日のデータを重回帰分析した結果、発作の発生を示す特徴量の抽出ができた。普段から、重症児者の日常生活における表情のデータを学習させておくことで、微細な変化を適格にとらえ、精度よくてんかん発作を予測発見することができる可能性を示した。これらのことより、家族や看護師が日々の観察によって感覚として捉えている微細な変化や個別性を統計学的に明らかにできた。 研究成果については、学会発表と論文投稿も行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
重症児の快・不快の状態を映像から数値化し、ストレス指標となる特徴量の抽出を実現した。この特徴量を活用し、ストレスの有無、てんかん発作が起こる可能性の予測が精度よくできる可能性を示すことができた。しかし、さらに多くのデータを安定・継続して収集し、分析の精度を高めることが求められる。そのためには、重症児の日常生活の中で、より簡便に、しかも正確に養育者の誰でもがデータを集積できるように一般化することが課題である。快・不快の判断が難しい状況においては、落ち着いている時すなわち「いつもと同じ」というのデータの蓄積が重要であるため、引き続きデータ収集を行っていく。合わせて、健康な成人のデータも収集し、比較検討していく。 現在使用している表情解析ソフトは、データ収集時にカメラ位置の調整が不可欠であり、被験者の動きによっては、再調整が必要となることもあった。また、重症児者の家族が撮影したデータは、表情の撮影が不十分で解析ができなかった。そのため、常時研究者の監視が必要となったが、今後は、データの蓄積、操作が容易なものに改良することが必要である。さらに、この表情解析ソフトは高額なライセンス料が課題であり、顔の認識精度を高めたオープンソースのプロシージャを使用したシステムを開発したが、立体認識を用いたより精度を高める工夫を行っていく。 また、不快に限定せず、重症児者の快の状況についても分析を進めることで、モデルに柔軟性を加えていくことを検討する。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた学会発表(5回分)がオンラインでの参加となったため、旅費が不要となった。本研究の継続を可能にするためには、感染症対策が必須であることから、感染対策に充てる。また、本研究においては、データ収集による蓄積量や取得データの質は重要であり、感染対策を実施しながら、より安全で正確にデータ収集を継続できる機器を選択し、システム調整を行う経費に使用する。また、学会やセミナーへの参加、文献検索などにより最新の情報を収集することに経費を使用する。
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Research Products
(11 results)