2021 Fiscal Year Research-status Report
パーキンソン病患者の運動療法LSVT-BIGによる歩行改善の運動学的機序解明
Project/Area Number |
21K11202
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
櫻井 宏明 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (90387704)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本谷 郁雄 藤田医科大学, 保健衛生学部, 客員講師 (20754740)
武田 和也 藤田医科大学, 保健衛生学部, 助教 (30835468)
金田 嘉清 藤田医科大学, 保健学研究科, 教授 (50387669)
田辺 茂雄 藤田医科大学, 保健学研究科, 准教授 (50398632)
小山 総市朗 藤田医科大学, 保健学研究科, 講師 (90754705)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 三次元動作解析装置 / 歩行計測 / パーキンソン病 / 運動学的観点 / LSVT |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、パーキンソン病患者(以下、PD患者)に対する運動療法、Lee Silverman Voice Treatment-BIG(以下、LSVT-BIG)が、歩行時の下肢の関節角度変化、身体運動軌跡、および各時間距離因子に与える影響を解明することである。研究成果は、PD患者に対するLSVT-BIG実施による、歩行能力の改善に関する作用機序の解明に貢献できると考えられる。また、多くの罹患者数が報告されている本疾患に対する本手法の機序解明は、リハビリテーション医療の質の向上に貢献し、国内外に与える影響は大きいと考えられる。 我々は、LSVT-BIGが歩行能力に与える影響に関する事前検討結果として、著効例が多数ある一方で、歩行能力の大きな改善が得られない症例を複数経験した。本手法の治療概念としては、関節可動域と運動正確性を改善させ、その結果として歩行能力を改善させる、という手法であるため、パフォーマンスの評価のみではなく、運動学的観点から検討する必要性を感じ、本研究の着想に至った。 本研究では、まず、PD患者の病態に精通している健常の熟練理学療法士または健常の熟練作業療法士を対象に模擬的な計測を行い、歩行時の運動正確性に適した評価指標を検討する。次に、運動正確性や関節角度変化によるPD患者の歩行運動様式変化の特徴を運動学的観点から明らかにする。最後に、LSVT-BIGの介入前後に同様の計測を行い、PD患者の歩行改善の機序について運動学的観点から明らかにする。 令和3年度は、大学、関連施設において、健常の熟練理学療法士または健常の熟練作業療法士を対象に、PD患者を模擬した状態で、三次元動作解析装置を用いた歩行計測を実施した。また、歩行計測を行うにあたり、主に関連施設での計測環境の整備を実施した。取得したデータから、PD患者の歩行改善の機序に用いる評価指標を検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、PD患者に対するLSVT-BIGが歩行時の下肢の関節角度変化、身体運動軌跡、および各時間距離因子に与える影響を解明することを目的としている。まず、PD患者の病態について精通している大学、関連施設の健常の熟練理学療法士または健常の熟練作業療法士を対象に、歩行時の運動正確性に適した評価指標を明らかにする。次に、運動正確性の指標や関節角度変化によるPD患者の歩行運動様式の特徴を運動学的観点から明らかにする。最後に、LSVT-BIGの介入前後に同様の計測を行い、PD患者の歩行改善の機序について運動学的観点から明らかにする。 令和3年度は、関連施設の計測環境を整備し、健常の熟練理学療法士または健常の熟練作業療法士を対象に、PD患者を模擬した状態で、三次元動作解析装置を用いた歩行計測を実施し、運動正確性の指標検討を行った。コロナウィルス禍という社会情勢によって、歩行計測の実施にあたっての計測環境の整備や実験を行う上での感染拡大予防対策に対する多くの配慮が必要であり、実施が延期される場面も何度か生じた。しかし、研究分担者との連携を密に行い、三次元動作解析装置を用いた歩行計測を必要最低限実施できた。そのため、遂行状況としては「おおむね順調に進展している」に該当すると考える。令和4年度の研究実施計画としては、健常成人を対象とした歩行計測を継続し、運動正確性の評価指標の更なる検討と、解析プログラムの作成を進める。さらに、PD患者の歩行計測も行い、運動学的観点から健常成人との違いを検討し、PD患者の歩行運動様式の特徴を明らかにしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、本研究の推進に向けて、研究分担者間でPD患者の歩行能力低下や改善手法とその評価指標に関する現状の課題を改めて議論、共有し、主に関連施設の歩行計測の環境整備を進め、本研究計画を遂行するための基盤を構築した。その後、PD患者の病態について精通している大学、関連施設の健常の熟練理学療法士または健常の熟練作業療法士を対象に、三次元動作解析装置を用いた歩行計測を実施し、データを取得することができた。現在、PD患者の歩行運動様式の特徴を明らかにするための運動正確性の指標を分析、検討している段階である。次年度は、健常成人を対象とした歩行計測を継続し、運動正確性の評価指標の詳細な検討と、解析プログラムの作成を予定している。さらに、PD患者の歩行計測も行い、運動学的観点からの健常成人との違いを検討し、PD患者の歩行運動様式の特徴を明らかにしていく予定であり、研究は概ね計画通りに進行している。 一方で、今年度はコロナウィルス禍という社会情勢によって、歩行計測の実施にあたっての計測環境の整備や実験を行う上での感染拡大予防対策に対する多くの配慮が必要であり、実施予定が延期する場面も生じた。これらの結果を踏まえ、次年度以降は、歩行計測の事前説明などにおいて可能な限りICT(Information and Communication Technology)を活用し、万全の感染拡大予防対策を講じた上で計画を遂行していく予定である。
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