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2022 Fiscal Year Research-status Report

腫瘍細胞の特性を利用した滑膜肉腫の術後患肢機能を高める薬剤の探索

Research Project

Project/Area Number 21K11252
Research InstitutionTokoha University

Principal Investigator

太田 力  常葉大学, 保健医療学部, 教授 (10290892)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2024-03-31
Keywords滑膜肉腫
Outline of Annual Research Achievements

滑膜肉腫は全軟部肉腫のおよそ10%を占める悪性腫瘍で、四肢関節近傍に好発し、関節包、滑液包、腱鞘、腱などに接して発生するものが多い。以前は、四肢発生の肉腫は切断を必要とする治療が多く行われていたが、最近は、腫瘍と共に一部の健常組織を切除する患肢温存手術が多くなっている。術後は、患者の日常生活活動(ADL)や生活の質(QOL)の向上に加え、社会復帰を目標としたリハビリテーションが増えてきている。リハビリテーションの効果に影響を与える外科的切除後の患肢機能(術後患肢機能)は、周囲の軟部組織(骨腱、神経上膜、血管鞘なと)の除去の程度に大きく左右される。術後の患肢機能を向上させる手術方法の開発も行われているが、術後の患肢機能回復は術前の抗がん剤による腫瘍縮小効果に大きく依存する。最近、国内外では滑膜肉腫に対してパゾパニブ、トラベクテジン、エリブリンが保険適応となったが、これら抗がん剤の奏功率は15%前後と低く、依然として効果的な薬剤がないままの状態であり、滑膜肉腫に対する効果的な抗がん剤が求められている。申請者は、これまでの網羅的遺伝子発現解析や放射線感受性試験を用いた研究から、滑膜肉腫細胞は「2本鎖切断DNAの修復経路の活性低下」という特性を持つことを発見している(特に、DNA相同組換え修復活性が低下していることを見出している)。そこで、本研究ではこの滑膜肉腫細胞の特性に、合成致死療法を応用して、滑膜肉腫に対する効果的な薬剤を探し出すことを目的とした。本年度は、昨年度に引き続き滑膜肉腫から樹立された細胞株を用いて、候補薬剤の単剤での細胞増殖抑制効果を調べた。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

現在臨床で使用されている抗がん剤の中で、本研究ではPARP阻害剤とDNA修復経路で働くリン酸化酵素(ATM, ATR, CHK1, CHK2, DNA-PK)の阻害剤など「DNA修復阻害剤」として働く薬剤、アルキル化剤(CYC)、代謝拮抗物質(5-FU, Gem, MTX, Ara-C)、トポイソメラーゼ阻害剤(CPT-11, ETP)、DNA結合作用剤(CDDP, MMC, ADM, BLM)など「DNA障害誘発剤」として働く薬剤を用いて解析を計画した。
現在、これら「DNA修復阻害剤」や「DNA障害誘発剤」を単剤(種々の濃度)で滑膜肉腫細胞に作用させ、効果的な癌細胞増殖阻害効果を示す薬剤を探索している。
昨年度、細胞増殖抑制効果は、6穴プレートに細胞を撒き、12時間後に培地交換時に薬剤を添加し、48時間後に細胞を回収し細胞数を計測する方法で行なっていた。しかし、DNA切断活性を示す薬剤による細胞増殖抑制効果は細胞分裂回数を数回経てから現れる場合も報告されている。そこで、本年度は、薬剤存在化で6日間培養後のコロニー形成数を計測する細胞増殖抑制効果の判定を行う方法で、滑膜肉腫細胞株の増殖抑制効果を示す薬剤の探索を行った。その結果、昨年度の解析方法では増殖抑制効果を示さなかった薬剤に関して、いくつかの薬剤は、効果を示すことが判明した。特に、2本鎖DNAを切断する薬剤に増殖抑制効果が高いことがわかった。しかし、2本鎖DNAを切断しない薬剤に関しては、増殖抑制効果が見られたものはなかった。
また、私達は、滑膜肉腫細胞は「2本鎖切断DNAの修復経路の活性低下」という特性を持つことを発見しているが、どのような作用機序で2本鎖切断DNAの修復経路(DNA相同組換え修復活性)が低下しているのか解析を行ったが、その原因に関しては不明のままである。

Strategy for Future Research Activity

現在、効果の異なる「DNA修復阻害剤」と「DNA障害誘発剤」の組み合わせによる効果的な癌細胞増殖阻害効果(相加効果あるいは相乗効果)を示す2剤組み合わせ薬剤の探索を行っている。方法は、細胞増殖抑制効果は、6穴プレートに細胞を撒き、12時間後に培地交換時に薬剤を添加し、48時間後に細胞を回収し細胞数を計測する方法に加え、薬剤存在化で6日間培養後のコロニー形成数を計測する細胞増殖抑制効果の判定を行う方法である。今のところ、効果的な2剤の組み合わせは見つかっていないが、今年度も引き続き、滑膜肉腫細胞株の増殖抑制効果を示す2剤組み合わせによる薬剤の探索を進めて行く予定である。
また、私達は滑膜肉腫の発症原因となっている(染色体転座によって、正常組織では発現していない)融合遺伝子SYT-SSXの遺伝子産物(融合タンパク質)は、転写抑制機能があることを見出している。そこで、昨年度に引き続き、複数の滑膜肉腫由来の細胞株の網羅的遺伝子発現解析を行い、滑膜肉腫由来の細胞株に共通する遺伝子発現異常を解析し、滑膜肉腫細胞株に効果的な薬剤探索のヒントを得ることを計画している。

Causes of Carryover

コロナの影響で研究の進みが少し遅れたため。

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Published: 2023-12-25  

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