2022 Fiscal Year Research-status Report
アスリート・パラアスリートを暑熱障害から守る -炭酸を用いた総合戦略-
Project/Area Number |
21K11405
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Research Institution | Nihon Fukushi University |
Principal Investigator |
西村 直記 日本福祉大学, スポーツ科学部, 教授 (40278362)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三井 利仁 日本福祉大学, スポーツ科学部, 教授 (70564186)
安藤 佳代子 日本福祉大学, スポーツ科学部, 准教授 (90618795)
兒玉 友 日本福祉大学, スポーツ科学部, 准教授 (40636164)
杉本 直俊 金沢大学, 保健学系, 教授 (80272954)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高濃度炭酸泉 / パラアスリート / 汗腺機能 / 皮膚血管機能 / 定量的軸索反射性発汗試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
頚髄や脊髄損傷を伴うパラアスリートでは、その障害レベルにより体温調節反応が異なることが知られている。頚髄損傷者では、汗腺機能や皮膚血管運動機能が全身で障害されるのに対し、胸・腰髄損傷者では、障害部位より下位の領域での汗腺機能や皮膚血管運動機能が障害される。このようなパラアスリートは、暑熱環境下での暑熱障害発症の危険性が高まることは疑う余地もない。本研究では、強力な皮膚血管拡張作用を有する高濃度炭酸泉を用いて、パラアスリートを暑熱障害から守ることを目的とした。 頚髄や脊髄損傷を伴うパラアスリートに水温34℃での高濃度炭酸泉(1000ppm)への下肢浴を10分間行わせ、障害部位においても皮膚血管拡張が見られるか否かを確認した。その結果、全てのパラアスリートで浸漬部位での皮膚血管拡張が認められた。また、定量的軸索反射性発汗試験(QSART)を実施したところ、損傷部での最大発汗量および発汗潜時は、いずれも健常者の正常範囲とほぼ同じである事が確認できた。よって、このようなパラアスリートに対して高濃度炭酸泉への連浴を行うことにより、汗腺機能や皮膚血管運動機能を回復させる可能性が期待できる。 加えて、温度感受性TRPチャネル(TRPV1)を発現させた培養細胞を20%CO2濃度(pH6.8)および5%CO2濃度(pH7.4)の環境下で24時間培養させたところ、TRPV1の発現量は20%CO2濃度で明らかに増加したことから、TRPV1が高濃度炭酸泉浸漬時の温熱感覚上昇に関わる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2022年度の前半期においては、新型コロナ感染拡大状況が完全に治まっていない状況であったため、パラアスリートを対象とした実験が十分に実施できなかったが、後半期に入り、徐々に実験を開始することができたが、当初の予定よりもやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
全国のパラアスリート(車いすテニス、車いすバドミントン、車いすソフトボールなど)を対象に、炭酸泉への浸漬効果や定量的軸索反射性発汗試験(QSART)の追加実験を行い、最も効果的な入浴方法(湯温、入浴時間など)について検討する。加えて、分担研究者の杉本直俊先生(金沢大学)と共に、培養細胞を用いた追加実験を行い、炭酸泉への浸漬による皮膚血管拡張の機序解明を追求する。
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Causes of Carryover |
コロナ感染拡大状況が完全に収まらない状況の中で、被験者数が思うように集まらなかったため、物品費や謝礼金があまり発生しなかった。次年度は、全国各地(金沢、大阪、和歌山、佐賀など)で実験を行う予定であり、被験者数が確保できると思われるため、実験に必要な消耗品、旅費、謝礼金を使用する予定である。
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