2022 Fiscal Year Research-status Report
スポーツ庁ガイドライン策定後における運動部活動の傷害予防に向けたリスク要因の探索
Project/Area Number |
21K11497
|
Research Institution | Chukyo University |
Principal Investigator |
重松 良祐 中京大学, スポーツ科学部, 教授 (60323284)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹井 浩行 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究副部長 (60733681)
種田 行男 中京大学, スポーツ科学部, 教授 (30185178)
中田 由夫 筑波大学, 体育系, 准教授 (00375461)
笹山 健作 三重大学, 教育学部, 准教授 (20780729)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 部活動ガイドライン / スポーツ専門化 / 運動時間 / 全国大会 / 児童 / 生徒 / 外傷 / 障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は前年に、スポーツに費やす時間と、1種目に限定する専門化の2つをスポーツ傷害のリスク要因とみなして分析したところ、校種によって2要因の関連度が同じではないことを確認した。特に中学校と高校では両要因とも有意に関連していなかった。その理由として、中学校と高校では90%以上が1種目しか実践しておらず、専門化によるリスクを検出できるサンプルサイズではなかったことが考えられた。また、スポーツ庁のガイドラインによって週あたりのスポーツ時間の上限が定められたことから、今後はスポーツ時間の影響が限定的になると思われる。これらを踏まえ、2要因以外のリスク要因も定量することとした。質問紙調査に有効回答を提出した三重大学教育学部の1-4年生のうち、小学校から高校の1校種以上でスポーツ組織に所属したことがある484名を対象とした。質問紙ではスポーツ傷害(外傷と障害)の他、性、スポーツ開始年齢、全国・県大会出場経験、前校種での受傷経験も尋ねた。受傷者の出現割合比(prevalence ratio: PR)を算出したところ、小学校低学年では全要因が有意でなかった。小学校高学年ではスポーツ時間と専門化の交互作用が有意であり、同じスポーツ時間であれば複数種目の受傷者率が小さかった(PRと95%信頼区間は0.99, 0.98-1.00)。中学校では全国・県大会に出場している者で受傷リスクが高かった(1.07, 1.04-1.12)。高校では男性(1.39, 1.02-1.89)、全国・県大会出場(1.04, 1.01-1.08)、中学校での受傷経験(1.34, 1.00-1.77)の者で受傷リスクが高かった。以上のことから、スポーツ時間と専門化以外の要因も有意に関連していること、そしてリスク要因の関連性の程度は校種によって異なっており、校種ごとに対策を講じる必要性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度には、2本目の論文の発表、1つの調査の実施、2つ目の調査の立案をおこなったことから、概ね順調に進展していると判断した。 2本目の論文から分かったこととして、小学校低学年では特定のリスク要因が明確でなかったことが挙げられる。一方、小学校高学年以降では明確になった。たとえば中学校では全国・県大会に出場している者で受傷リスクが高かった(PRと95%信頼区間は1.07, 1.04-1.12)。全国・県大会出場は高校においても有意なリスク要因であることが分かった(1.04, 1.01-1.08)。そのため、今後の調査では全国・県大会に関連する項目を詳細に尋ねることとした(2023年度の冒頭に調査予定)。 1つ目の調査は、研究代表者が前年度まで所属していた研究機関で実施した。これにより、前回データ収集した対象者と同じような特徴を有する大学生を対象にすることができた。現在、このデータを使ってスポーツ庁の部活動ガイドライン施行後の傷害発生状況を分析している。 2つ目の調査では、新所属機関に在籍する大学1年生800名を予定している。ここでは、運動時間や専門化の状況に加え、全国・県大会への出場の有無や出場に関連する要因も調査する予定である。これらは量的な調査であるが、質的な調査も別途実施する予定である。質的な調査では、運動部活動に所属した経験のある大学生を対象にインタビューを実施し、受傷したことがあればその原因を半構造化面接法で尋ねる。受傷したことが無かった場合、なぜ受傷せずに運動を継続できたのかを尋ねる。このようなインタビュー記録を構造構成的質的研究法にて分析し、傷害に繋がる要因、そして傷害を避けられる要因を探索する。 以上より、概ね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2本目の論文結果を踏まえ、令和5年度の調査では全国・県大会に関連する項目を詳細に尋ねることとする。 また、令和3年度まで所属していた研究機関で収集したデータを使ってスポーツ庁の部活動ガイドライン施行後の傷害発生状況を分析する。 さらに、令和5年度に大学1年生800名を対象にして、運動時間や専門化の状況に加え、全国・県大会への出場の有無や出場に関連する要因も調査する。これらは量的な調査であるが、質的な調査も別途実施する予定である。質的な調査では、運動部活動に所属した経験のある大学生を対象にインタビューを実施し、受傷したことがあればその原因を半構造化面接法で尋ねる。受傷したことが無かった場合、なぜ受傷せずに運動を継続できたのかを尋ねる。このようなインタビュー記録を構造構成的質的研究法にて分析し、傷害に繋がる要因、そして傷害を避けられる要因を探索する。 このような調査を経ることで、研究目的である、運動部活動中の傷害(外傷+障害)のリスク要因を同定する。
|
Causes of Carryover |
研究が予定通り進捗したが、前年度に使用しなかった研究費から使途したため今年度も残った。令和5年度は分析や発表を実施していくため、また海外の研究者とも意見交換等をおこなうことも予定しており、それらに研究費を充てる予定である。
|