2023 Fiscal Year Research-status Report
睡眠不足が引き起こす行動異常の分子機序解明と予防法の確立
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21K11646
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
近久 幸子 四国大学, 生活科学部, 准教授 (00452649)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 慢性不眠 / Hmgcs2 / うつ様行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在までに、①マウスにおけるケトン体合成酵素Hmgcs2に関して、siRNAの脳室内および腸管や尾静脈へのin vivo投与によって、脳および肝臓のHmgcs2の遺伝子やタンパクが確実にノックダウンされるかどうかの確認、②これら脳および肝臓のHmgcs2ノックダウンにおける、マウスの睡眠変化と網羅的行動解析、③脳および肝臓のHmgcs2ノックダウンにおける、運動負荷を伴う断眠およびハンドリングによる断眠後のリバウンドの変化の違い、④アストロサイト特異的Hmgcs2過剰発現マウスの作製と睡眠変化の解析について検討を行った。 現在までの実験で得られた結果は以下の通りである。①ケトン体合成酵素Hmgcs2に関して、3種類のsiRNAを混合し、in vivo用の導入試薬を用いて脳室および尾静脈より投与した結果、それぞれ脳内と肝臓におけるHmcs2の発現低下が認められた。②siRNA投与による脳および肝臓のHmgcs2ノックダウンでは、脳のノックダウン、肝臓のノックダウンともに、ベースラインの睡眠には大きな変化は認められなかった。行動変化に関しては、脳のHmgcs2ノックダウンにおいて、うつ様行動などの情動行動に変化が認められたが、肝臓のHmgcs2ノックダウンでは、行動変化が観察されなかった。③運動負荷を伴う断眠とハンドリングによる断眠後のリバンドの変化に関しては、肝臓Hmgcs2ノックダウンでは運動負荷を伴う断眠後のリバンド(ノンレム睡眠中の脳波デルタパワー)の減弱が認められた。一方、脳のHmgcs2ノックダウンでは、ハンドリングによる断眠後のリバンド(ノンレム睡眠中の脳波デルタパワー)の減弱が認められた。⑤アストロサイト特異的Hmgcs2過剰発現マウスの睡眠変化については、現在解析を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに、野生型マウスを用いたsiRNA投与による睡眠記録と行動解析は、脳内投与および末梢投与ともに、ほぼ順調に実験が進んでいる。しかし、アストロサイト特異的Hmgcs2過剰発現マウスは、作成はできているものの、繁殖がうまくいかない時期があり、このマウスを用いた睡眠記録および行動解析にやや遅れが生じている。さらに、当初予定していたHmgcs2 floxマウスの作製において、複数の要因から滞った時期があったため、実験計画に遅れが生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
Hmgcs2過剰発現マウスの繁殖法を見直すことで、実験に使用できるマウスの安定供給に努める。また、Hmgcs2 floxマウスの作製は完了し、現在繁殖を進めているため、Hmgcs2 floxマウスを用いて、siRNAよりも強力で部位特異的なHmgcs2ノックダウンによる睡眠変化や行動変化の検討を行う。さらに、免疫組織化学染色による組織学的解析やウェスタンブロットによるタンパク解析、リアルタイムRT-PCRによる遺伝子解析などにより、分子メカニズムを詳細に検討する。
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Causes of Carryover |
(理由)本年度の研究に必要な試薬類について、在庫が残っており予定より少額で賄えたため、次年度使用額が生じた。また、研究代表が産休明けだったことにより、学会への参加が難しくなったため、旅費が未使用となり、次年度使用額が生じた。 (使用計画)次年度は、遺伝子改変マウスの分子生物学的解析が増えるため、試薬が多く必要になると予想される。また、次年度は学会にも参加予定であるため、旅費使用額も増えることが予想される。そのため、次年度研究費と合わせてその費用に使用する計画である。
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