2021 Fiscal Year Research-status Report
腹膜タイト結合におけるクローディン15の生理学的意義の検討
Project/Area Number |
21K11648
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
石塚 典子 静岡県立大学, 食品栄養科学部, 助教 (30440283)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腹膜 / クローディン15 / タイト結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
クローディンは、タイト結合のバリアの強さとイオン透過性に関与しており、現在までに27種類が知られている。各クローディンの発現パターンは臓器ごとに異なり、臓器固有の機能に関与していると考えられている。腹膜を介した物質の透過性は高いと考えられており、腹膜は透析療法に用いられている。しかし、腹腔内の液産生機構についてはほとんど研究されていない。Na+輸送は体液の移動に関与しており、腹膜にNa+透過性を有するクローディン15が強く発現していることは、腹膜に何らかの生理機能、特に腹腔内の液産生に関与している可能性が高い。しかし、これまでにクローディン15が腹膜に発現していることは知られておらず、腹膜におけるタイト結合の構成分子やその役割についても検討されていない。クローディン15が何故腹膜に発現しているのか、腹膜のタイト結合は液産生において何らかの役割を果たしているのかを明らかにすることを目的とした。 これまで、クローディン15の小腸以外での発現は高くないと考えられており、腹膜に発現していることは全く知られていない。これは、各臓器の機能を評価するにあたり、腹膜が外膜としてしか考えられていないためである。しかし腹膜は、体表面積より大きな面積を有し、腹腔という大きな区画を隔てている重要な膜であり、病的な状態では腹水が貯留するが、生理的な状態での腹腔内の漿液の産生機序については調べられていない。臨床的には、腹膜透析療法に利用されており、その臨床的重要性とは逆に、膜輸送に関しては申請者が知る限りでは、系統的な研究されてきていない。本研究は、このような観点から腹膜のタイト結合のイオン透過性を初めて評価する研究である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
野生型マウスの腹膜にはクローディン15、クローディン2、クローディン3などのタイト結合タンパク質や野生型マウスの腹膜中皮のタイト結合タンパク質の発現をRT-PCR法で検討した。クローディン15、クローディン2、クローディン3の発現が観察され、クローディン15の発現量が他のクローディンより、高いことが示唆された。また、Na+依存性グルコース輸送体であるSGLT1の発現がみられた。蛍光免疫染色により、腹膜を構成する中皮に発現の部位差があるのか否か検討した。臓側膜である腸管漿膜、壁側膜である横隔膜中皮のタイト結合にはクローディン15が一様に発現しており、明確な部位差は観察されず、クローディン15の発現は腹膜全体に一様に発現していることが示唆された。 摘出した横隔膜中皮を用い電気生理学的にタイト結合のバリア機能を検討した。経上皮抵抗は低く、明確なタイト結合に由来すると考えられる、電気生理学的な特性は明らかにできなかった。また、測定数は十分でないが、クローディン15欠損マウスより同様に摘出した腹膜を用い検討を行ったが、経上皮抵抗の明確な変化は観察されず、手法等の改善等更なる検討が必要であった。
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Strategy for Future Research Activity |
横隔膜中皮におけるバリア機能にクローディン15が関与するか否かを検討するために、本年度は、中皮バリア機能の評価法を確立することを試みる。具体的には、クローディン15ノックアウトマウスを対象群とし、腹腔内に投与したイオンや蛍光物質の血漿中の増加量を経時的にモニターし、バリア機能を評価する。また、クローディン15欠損マウス欠損が中皮構造に大きな形態変化をもたらすかを電子顕微鏡観察により評価する。
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Causes of Carryover |
クローディン15は陽イオン選択性のポアをタイト結合に形成することが知られている。そのため、クローディン15ノックアウトマウスを用いて、腹膜のイオン選択性の変化を比較する計画であった。しかし、野生型(クローディン15が発現している)マウスの腹膜でのイオン選択性の評価方法が改善が必要であることが示唆され、当初計画したクローディン15ノックアウトマウスを用いた詳細な検討はできなかった。繰り越した予算は当初計画になかった電子顕微鏡観察等やイオン透過性の評価法の改善に充てる予定である。
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