2023 Fiscal Year Annual Research Report
腹膜タイト結合におけるクローディン15の生理学的意義の検討
Project/Area Number |
21K11648
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Research Institution | University of Shizuoka,Shizuoka College |
Principal Investigator |
竹下 典子 静岡県立大学短期大学部, 短期大学部, 准教授 (30440283)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 腹膜 / クローディン15 / タイト結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
腹膜は腹腔内を包む膜で、その表面は中皮細胞の単層から成り、深部は結合組織で構成される。腎不全に対する腹膜透析療法では、この腹膜が透析膜の役割を果たす。透析液を腹腔内に入れることで、中皮細胞を通じて体内の老廃物が抽出される。物質の拡散を制御するのは中皮膜であり、一般的に腹膜中皮細胞層は透過性が高いとされる。タイト結合タンパク質の一つであるクローディン15が腹膜に発現しており、Na+透過性のチャネルを形成することが知られている。本研究では、クローディン15が腹膜の物質透過性に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。 クローディン15欠損マウスを用い、腹膜のイオン透過性の変化を観察した。また、腹腔内にグルコースを投与し、血糖上昇を検討した。さらに、腹膜中皮の腺毛様構造がクローディン15欠損で変化するかを走査電子顕微鏡で観察した。 クローディン15欠損マウスを用いた実験では、クローディン15の有無に関わらず膜のイオン透過性は高いままであった。また、グルコース投与による血糖上昇には、野生型マウスとクローディン15欠損マウスで大きな差は見られなかった。腺毛様構造の観察では、クローディン15欠損による線毛長の変化は確認されなかった。クローディン15は腹膜全体に高発現していたが、腹膜のイオン透過性や低分子の透過性制御には寄与していないことが示唆された。これにより、クローディン15の欠損が腹膜の物質透過性に大きな影響を与えないことが明らかになった。 本研究により、クローディン15が腹膜のイオン透過性および低分子の透過性制御に関与していないことが示された。これらの結果は、腹膜透析療法の改善に向けた新たな知見を提供するものである。今後は、高分子の透過性や腹膜タイト結合の生理的重要性をさらに明らかにするための研究が必要である。
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