2021 Fiscal Year Research-status Report
分散協調学習の重要度判定に基づく被災者指向型災害情報炊き出しシステムの開発
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21K11851
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Research Institution | Prefectural University of Hiroshima |
Principal Investigator |
重安 哲也 県立広島大学, 地域創生学部, 教授 (90352046)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 被災情報配信 / DTN / 無線LAN / すれ違い通信 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では,大規模災害時にスマートフォン同士の直接通信でデータを収集・伝達し,災害対策本部や避難所などに情報を集約する被災情報炊き出しシステムを開発する. 被災情報収集が目的の既存システムと大きく異なり,本研究課題では,ネットワーク内キャッシュとコンテンツ指向型ネットワーク基盤の導入により 1)周辺の道路寸断,建物倒壊等の情報を避難途中の被災者にプッシュ配信し2次災害を軽減する, 2)倒壊建物内の生埋め・閉じ込め等を周辺に通知し,被災者間共助での早期救助を促進する, 3)収集済情報の有益性を時間的・地理的観点から推定し,必要とされる時間・場所に適切なキャッシュを配置する仕組みを実現する,さらに,これらの3点の情報伝達のために, 4)被災情報閲覧時の端末の操作履歴から情報の重要度をユーザの所在エリアごとに自動で分散協調学習させ,地域ごとの重要度の違いに応じた優先データ転送手法を実現し,災害情報の配信希望者にも短時間・低コストで情報を提供するという4点を柱とした情報配信に重点を置く被災情報炊出しシステムを開発する.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題の初年度となるR3年度では,被災情報を収集するための通信基盤となる通信技術について検討を行った. 検討を行ったのは主として次の2点である.1)すれ違い通信のDTN(Delay Torelant Networking)技術を基盤とした通信ネッワークの構築による既設通信回線の利用不能時においても情報を的確に伝送する手法を検討した.具体的には,現在普及するスマートフォンの無線LAN(WiFi)機能を用いたすれ違い通信により,基地局が動作していない場合にも,スマートフォンの周辺のユーザ間で情報を伝達することを検討した.その際に,単に,すれ違いだけでの情報伝達を行う場合には,被災地の被災者数の増加によって,実質的に情報伝送が不可になることから,必要以上のデータを転送しないこと,さらには,建物の倒壊などによって通行不能となった箇所にいると思われるユーザに対しては自動的にこれを検知することでデータを転送しない情報伝達手法を検討した.
また,2)被災情報配信を行う際にもネットワークのトラフィックを効果的に削減するために,コンテンツ指向型のデータ伝送技術についても検討を行った.この検討では,特に,被災地での使用を想定し,コンテンツ生成サーバに被災地を移動しながら避難する被災者を想定し,その被災者が一時的にネットワークを離脱することなどした場合にも,データ配信に滞りを起こさない手法を検討した. これらの検討は提案アルゴリズムをシミュレーション評価によって優位性を確認した.
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Strategy for Future Research Activity |
R3年度は,被災地を移動する被災者を対象にした情報配信,収集の基盤について検討を行った.概ね順調な研究成果を得ることができたが,一方では,情報の緊急性などを考慮した配信あるいは収集については,検討が行えていなかった. そこで,R4年度は,引き続き,情報の配信,収集の基盤について検討を継続した検討を行う予定であるが,伝送対象となる被災情報をカテゴリ分けした上で,ネットワーク上での取り扱いをどのようにすべきかについて検討を行う. 具体的には,優先度の高低についても複数の指標を考えることができるため,情報の有効期限による分類(時間を過ぎると情報が意味をなさなくなる)や,情報が有益となる範囲(その情報を受信することで活用できる人々の範囲(地理的範囲あるいは属性的範囲)),さらには,情報から得ることのできる重要度(命に関わる情報か,あるいは,避難時間の短縮か)などのように,指標とすべきものを検討し,必要と判断したものから,ネットワーク場での取り扱いをどのようにすべきかの検討を行っていきたい.
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Causes of Carryover |
今年度は,コロナ禍の影響により,提案アルゴリズムを実装した実験機を用いた実証実験ができなかった.具体的には,データ伝送によるネットワーク負荷の軽減アルゴリズムが実機でも確実に動作することを確認するための実証実験を計画していたが,複数人による作業となるために,感染防止の観点から,同等の評価を行えるシミュレーション評価によって代替した.そのため,アルゴリズムを実装する実機を購入しなかったことなどが物品費が大きく減少した.また,これに加えて,成果発表のための学会旅費も計上していたが,ほとんどがオンライン開催となり旅費が不要となったことも,研究費使用額が減少した理由となっている.
なお,次年度使用額に回る金額は,R4年度以降の評価実験のための機材購入と学会主張に充てる予定である.具体的には,実機実験の計画を継続する場合は,その費用に,そうではなく,より高精度なシミュレーション評価に充てる場合には,高性能なGPUを搭載したPC等の購入都する予定である.
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