2023 Fiscal Year Research-status Report
一般の自動車による広域センシングのための管理可能な情報収集プラットフォームの確立
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21K11861
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
小川 祐紀雄 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (30783261)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | クラウドセンシング / 協調センシング / 局所性 / 偽情報 / SCTP / テンポラルネットワーク / クラウドソーシング |
Outline of Annual Research Achievements |
一般の自動車によるモバイルクラウドセンシング(Mobile Crowd Sensing)を実現するプラットフォームの整備に向けて、本年度は、以下の内容を実施した。 センシングプラットフォームに関しては、自動車間で通信を行わずに協調してデータを収集できるように、周囲の雑音を利用したデバイス間のセンシング同期方式を実装し、磁気センサの測定データを用いて同期できる見込みを得た。また、ある地域にのみ有用な収集情報をインターネット上に投稿したときの広がりの様子を、進化ゲームの手法を用いて評価し、情報交換相手が多くなるほど偽情報が広がりにくくなることを示した。 ネットワークプラットフォームに関しては、局所的な空間でデバイス同士が通信を行う状況を対象に、Bluetoothを用いた直接経路と無線LANを経由した経路をSCTPにより相補的に利用するシステムを実装し、動作確認を行った。また、自動車間でやりとりするメッセージがウィルス感染したときの広がりを抑制するため、時間変化するネットワーク(テンポラルネットワーク)の手法を用いて計算機シミュレーションを行い、交差点の位置での感染抑制が効果的であることを示した。 計算プラットフォームに関しては、クラウドセンシングの延長にある一般の自動車による荷物配送(Crowd-Sourced Delivery)を対象に、時間・地域での交通量の変化に適応した配送経路探索方式について計算機シミュレーションを行い、幹線道路や生活道路などが交通量の違いに応じて選択されることを示した。さらには、自動車とドローンの連携を念頭に、ドローンの乗っ取りを防ぐためのブロックチェーンを用いた認証方式の実装を行い、また、広域での収集情報のセキュリティ確保のために、広域に分散した侵入検知システムに連合学習を適用し、攻撃検知精度を向上できることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、自動車を用いたクラウドセンシングの実現に向けて、(1)周囲の状況とその時間変化に対して自律的・自己組織的に処理を行えること、(2)性能指標などを保つような外部から誘導できること、を主な機能とするシステムを目標としている。 本年度は、センシングプラットフォームに関しては、周囲の環境雑音のみを使って複数台の車における情報収集を自動同期させること、および、投稿した情報が偽情報であるときに情報の拡散を制御できるような情報交換相手の選び方について基礎的な評価を完了している。 ネットワークプラットフォームに関しては、局所的なデバイス間通信において複数経路を通信状況に応じて自動的に切り替えること、および、自動車ネットワークにおけるウィルス感染の広がりに対して適切な制御位置を選ぶことにについて基礎的な評価を完了している。 計算プラットフォームにおいては、一般の自動車をリレーさせていく配送において、時間・地域で交通量が変化するときの最適経路選択方法、および、自動車・クラウドセンシングとの連携に向けて、ドローンの操作セキュリティ確保、広域に分散配置した侵入検知システムへの連合学習の適用について基礎的な評価を完了している。 以上のことより、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年度は、令和5年度までの検討を進め、周囲の環境雑音のみを使って複数デバイスのセンシングを同期させる場合にどのような雑音が利用可能でどの程度までの同期が可能であるかの評価を進める。また、自動車のワイパー、ヘッド・フォグライト、エアコンなどのデバイスの曖昧なオン・オフ情報から、降雨の強さや濃霧の程度、気温などといった環境コンテキストの状態の程度を推定する方法を検討する。 さらに、モバイルネットワークが利用できない状況下でのデバイス間通信において、デバイス間の直接経路とその場所にある無線LAN経由を経路した経路の複数の通信経路を相補的に利用することで、デバイス間の通信範囲がどこまで拡大できるかを明らかにする。 また、広域のプラットフォームのセキュリティ確保とそのための制御に向け、広域に分散配置した侵入検知システムにおける攻撃の検知精度が攻撃メッセージのどのような特徴に依存するかを明らかにする。
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Causes of Carryover |
本年度は研究成果の発表の場として国内研究会を優先的に選んだ。それに伴い、当初、経費を計上していた英文論文や国際会議向けの英文原稿の準備費用(英文添削費用など)は、本年度は不要となった。この英文原稿の準備費用は、次年度に利用する予定である。
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