2021 Fiscal Year Research-status Report
オートエンコーダーを用いたSTINGの恒常的活性化メカニズムの解明
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21K12134
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
土屋 裕子 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (30557773)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | オートエンコーダー / シミュレーション / 疾病発症機構 / 創薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
自然免疫において重要な役割を担うタンパク質Stimulator of interferon genes(STING)は、感染が生じた際に生成されるリガンドを結合することで活性化しI型インターフェロン(IFN)産生を促進する。しかしアミノ酸変異により無感染状態でも恒常的にIFNを産生し自己免疫疾患の発症を導くことがわかってきた。変異による主鎖構造の顕著な変化が見られないことや、変異部位からIFN産生に関わる機能部位まで離れていることからダイナミックアロステリーと呼ばれる現象が生じていると考えられる。本疾患の発症メカニズムの解明のため、シミュレーションデータから側鎖原子の構造情報を落とすことなくシグナル伝達の解析を行う教師無し深層学習法オートエンコーダーに基づく手法を開発した(Tsuchiya et al, JCIM, 2019; Tsuchiya et al, SciRep, 2021)。本手法によりSTINGのアミノ酸変異が導く恒常的活性化のメカニズムの解明を実施する。 2021年度は上述の深層学習法をベースに、より複雑な系に対応可能な深層学習法の開発を実施した。また腸内細菌叢が関わる疾患へのSTINGの関与等も含む免疫系タンパク質の深層学習およびシミュレーション研究の最近の動向をまとめたレビュー論文を発表した(Tanekshi & Tsuchiya, Curr Opin Struct Biol. 2022)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、STINGの自己免疫疾患発症のメカニズム解明を目的に開発した、シミュレーションデータから側鎖原子の構造情報を落とすことなくシグナル伝達の解析を行う教師無し深層学習法オートエンコーダーに基づく手法の有用性を確認した(Tsuchiya et al, JCIM, 2019; Tsuchiya et al, SciRep, 2021)。この結果に基づき、より複雑なSTING系に対応可能な深層学習法の開発を開始した。また分子動力学シミュレーション実行に向け、電子顕微鏡構造を含む最新の立体構造情報を調査した。この他にもCurrent Opinion in Structural Biologyのレビュー執筆に招待され、STINGを含む免疫系タンパク質の深層学習やシミュレーション研究の最近の動向を発表した(Taneishi and Tsuchiya, 2022)。
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Strategy for Future Research Activity |
分子動力学シミュレーションおよび深層学習法を利用し、STINGタンパク質における変異部位から機能部位までのシグナル伝達経路とシグナルの伝播に関わるアミノ酸残基の抽出を行い、STINGが関わる自己免疫疾患の発症メカニズムの解明を目指す。今後は、関連論文等を参考に疾患発症に関わる変異型を複数選択し、野生型および変異型STINGの分子動力学シミュレーションを実行する。これと同時に、野生型と変異型のシミュレーションデータを比較し差異を抽出する深層学習法の開発を進める。特に、リガンド結合部位や天然変性領域等の構造変化が生じる領域の解析方法を検討する。
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Causes of Carryover |
2022年度に論文発表、学会発表、および外部計算機使用を予定しており、これらに使用する。
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