2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of the high functional thermosetting resin to contribute effective use of unutilized marine biomass
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21K12318
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Research Institution | Osaka Research Institute of Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
井上 陽太郎 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 和泉センター, 主幹研究員 (00372136)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 海洋バイオマス / 魚油 / 熱硬化性樹脂 / エポキシ化 / 植物油 / バイオベース材料 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに酸化劣化しやすい魚油に対し、クロロホルム中、過酸化水素、リンタングステン酸、セチルピリジニウムクロリドからエポキシ化魚油を合成していた。しかしながら、反応溶媒として環境負荷の高いクロロホルムを使用していたため、令和3年度では、環境負荷を低減させることを目的とし、非ハロゲン系溶媒または無溶媒で高効率および高選択的なエポキシ化反応の探索を行った。 少量のトルエンを添加し、魚油が有する二重結合に対し、1.15当量の30%過酸化水素水、0.02当量のタングステン酸ナトリウム二水和物、0.02当量のメチルトリオクチルアンモニウム硫酸水素塩、0.01当量のフェニルホスホン酸を加え、40℃で加温し、16時間反応させたところ、魚油のもつ二重結合が98%以上消失し、エポキシ基を90%以上導入されたことがわかった。さらに、トルエンを添加せず無溶媒で激しく撹拌させながらエポキシ化を行ったところ、反応は同様に進行し、目的とするエポキシ化魚油を得た。 また、バイオベース硬化剤として、別途合成したオイゲノールノボラック、カルダノールノボラックを合成し、エポキシ化魚油、イミダゾール系硬化促進剤と混合し熱硬化させることにより、目標とする海洋バイオマス熱硬化性樹脂を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請書に基づき、本研究を実施するうえで魚油をはじめとする出発原料のヨウ素価および合成したエポキシ化油のエポキシ当量を算出するための自動電位差滴定装置を導入した。 当初の目標であった、環境負荷の小さい非ハロゲン系溶媒下(トルエン)中、魚油のエポキシ化は30 %過酸化水素水、酸化触媒としてタングステン酸ナトリウム二水和物、助触媒としてフェニルホスホン酸、相関移動触媒としてメチルトリオクチルアンモニウム硫酸水素塩を加え、40℃に加温させ、反応させることにより、良好な収率でエポキシ化魚油を得ることができた。トルエンを入れずに無溶媒で激しく撹拌させながら魚油のエポキシ化を行ったところ、目的とするエポキシ化魚油が得られた。この反応は魚油だけでなく、大豆油、菜種油など他の植物油に対しても同様に無溶媒でエポキシ化油が得られることが明らかとなった。 得られたエポキシ化油と別途合成したオイゲノールノボラック、カルダノールノボラックを混合して、海洋バイオマス熱硬化性樹脂を作製した。得られた、熱硬化性樹脂に対し、固体NMR測定を行い、そのネットワーク構造を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
魚油の無溶媒エポキシ化反応は、令和3年度において少量スケールでの反応条件の最適化にとどまっている。令和4年度では、攪拌方法、反応容器の形状などを検討し、スケールアップしても良好な収率でエポキシ化魚油が得られる最適条件を見いだす。 さらに、キチンやキトサンなどと混合し、熱硬化させることで新規な海洋バイオマス複合材料の作製を実施し、機械特性などの評価を行う。
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Causes of Carryover |
旅費および学会参加費において、予定していた学会に参加できず、物品費に振り替えたため、残額が生じた。 残額は令和5年度において物品費として使用する。
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