2021 Fiscal Year Research-status Report
原爆遺跡の複合的構成による学習型観光都市の計画学的研究
Project/Area Number |
21K12470
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Research Institution | Nagasaki Institute of Applied Science |
Principal Investigator |
李 桓 長崎総合科学大学, 工学研究科, 教授 (30341556)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 長崎 / 原爆遺跡 / 学習型観光資源 / 平和 / 戦災復興都市計画 / 国際文化都市 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は長崎の原爆遺跡の複合的な構成の可能性を検討し、そして、これらの遺跡をいくつかのグループにおいて、都市空間の中で諸地域諸機能との相互関係から再評価し、新たな平和学習資源を構築するところにある。研究目的を達成するために、原爆遺跡についての再評価は極めて重要な作業である一方、今日の都市空間の文脈を読み解くために、都市計画についての史的な考察が重要な側面となる。 研究目的に沿って、2021年度は、現在の都市空間を評価するための基礎資料を構築するために、一つは戦後初期の復興期の社会状況について、「平和」というコンセプトに焦点を当て、当時の地方新聞である「長崎新聞」と「長崎日日新聞」を考察し、このコンセプトをめぐる社会的に関心が高まる時期や社会的背景などについて考察・分析した。この研究成果は長崎総合科学大学紀要第61巻第2号において発表した。 もう一つは、戦後初期の復興都市計画から国際文化都市建設法の成立頃までの都市計画を巡る状況について、「平和」というコンセプトに焦点を当てて考察・分析を行った。この研究成果は2022年4月に長崎総合科学大学紀要第62巻第1号に投稿済みで、現在査読を受けているところである。 この戦後初期の都市における社会的動向と都市計画の状況は、今日の都市空間の基調を形成するものとして、本研究は重視するフィールとの一つであり、2021年度の研究活動においては一定の成果を得ている。なお、このような史的な観点での検証は継続する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の目的を達成する為に、二つの側面において着手していこうとしてきた。一つは原爆遺跡・遺構を再整理することだが、これは長崎市が既に発表されてきた「被爆建造物等」のリストを受動的に受けて、利用するのではなく、戦後の被爆に関する記録資料などから再検証・再評価することである。この部分の作業に関しては、2021年度中は主に諸方面の資料の収集を行い、一定の成果を得た。一方、現地調査をも同時に進行する計画であったが、新型コロナの感染拡大により、現地調査が難航し、そのため、現地調査は十分に行えていなかった。 もう一つの着手は、長崎の都市計画や都市空間の成立・変遷について基本的な資料を作成し、評価のための基盤材料を構築することであるが、これに関しては、2021年度中は、戦後初期の復興都市計画及び国際文化都市法の成立について資料を収集と整理をし、一定の成果を得た。なお、この部分に関しても現地調査を行う計画であったが、同様の理由で、現地調査は展開できずにある。 昨年度の進捗状況は計画通りに進んでいるが、現地調査がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は2021年度に得た成果から、もう一段と研究のフィールドを拡大していく。前年度にあまり展開できなかった現地調査と実地資料の収集と整理を行い、原爆遺跡の実態の評価に関する研究の成果発表を順次に行っていく。そして、長崎の都市計画や都市空間の成立と変遷について、「長崎国際文化都市建設法」が成立後、1955年から1980年代までの資料調査を行い、経済成長期における都市の変遷、都市公共施設の発展、被爆建造物の滅失などについて調査をしていきたい。これらの戦後都市計画に関する調査成果を論文に作成していく。
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Causes of Carryover |
前年度は現地視察や現地調査が予定よりも大きく縮小し、学会などの活動もオンラインになったため、該当年度の経費の出費は計画よりも少ないなかった。新型コロナの感染状況を見ながら、戸外での移動がもっと自由にできるようになったら、実施できなかった実地調査などを補っていきたい。長崎に限らず、広島での調査を含めて、調査活動などに使用する予定である。
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Research Products
(1 results)