2023 Fiscal Year Research-status Report
Snow-scape Design Methods for Snowy and Cold Latitudes
Project/Area Number |
21K12550
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
藤森 修 東海大学, 国際文化学部, 教授 (10510084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 明彦 東海大学, 教育開発研究センター, 教授 (60337053) [Withdrawn]
早川 渉 東海大学, 国際文化学部, 講師 (60364288)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 雪景 / デザイン手法 / 積雪寒冷地 |
Outline of Annual Research Achievements |
北海道は亜寒帯に位置する積雪寒冷地である。 毎冬、厳しい冷え込みと積雪により、凛とした静けさの中で、その美しさに心を奪われる雪景が現れる。雪の形象は、気象条件に即応し変化に富んだ思いがけな い様々な表情を表出させてゆく。本研究は、積雪寒冷地における自然の造形力(積雪)を活用し、自然と人工が融合した「雪景」を創出する取り組みである。雪 の潜在的可能性を引き出し、積雪現象を積極的に受け入れた雪景デザインを提案する。 先行の取り組みでは、スチール材による骨格に唐松合板を棚状に構成した簡素な造形物を制作し、美術館にて展示を行った。時には美しくユニークな雪の形象が 現出した。 次の取り組みでは鋼棒と鋼板による試作品を制作した。吹雪風洞実験による知見を得て、試作品の数台を旭川郊外及び北海道 美瑛に設置し実雪実験した。極寒地特有の 雪質による雪の形象が現れては消え、作品を鑑賞した地域住民からは、「雪国の日常を捉えた静謐で美しい作品」「心情的な温もりのある作品」など好意的意見 が数多く寄せられた。一方で、強風による安全性の問題や、形象変化が緩慢な課題に直面した。今後の取り組みでは、先行実験においての「雪の形象変化が鈍 重であり、鑑賞者が作品近傍に滞留する時間的制約」を鑑み、雪景の形象変化を活発にさせることが課題である。 後述の「現在までの進捗状況」での成果は芸術工学会で研究発表を行い、学会誌へ投稿し採録された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に引き続き本研究の今年度の取り組みとしては、雪の形象変化を促す目的より、堆雪の反射光と造形物からの放射熱による融雪効果を検討した。 具体的には、造形物の棚板状の水平面の鋼板裏面を黒塗装することで、光の短波放射(雪の反射光)と長波放射(鋼板裏面からの放射熱)の作用により活発な形 象変化の実現を目指した。 北海道立総合研究機構 建築研究本部企画課長 堤拓哉氏の助言を得て、棚板の塗装色を違えた4分の1の縮尺モデルを制作し、2023年12月より翌年の3月にかけて、屋外空間にて放射温度計(赤外線領域の波長の光を測定)により「鋼板の表面温度の推移」を検証した。鋼板裏面を黒色塗装したモデルは、鋼 板両面を白色塗装したモデルと比較し、表面温度の変化が迅速であることが分かった。棚板全てを白色塗装したモデルは日射の反射率が高いため、短波放射に関しては大きいものの、長波放射は小さく融雪作用は鈍くなる。一方で白色塗装と黒色塗装を組み合わせたモデルは短波放射を確保したうえで長波放射も大きくなることが分かった。
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Strategy for Future Research Activity |
実雪実験においては、筆者の所属大学(札幌市南区)のキャンパスにて、2023年12月から2024年3月にかけて経過観察を行った。今年度の実験で得た知見をもとに、造形物の試作品を外部委託により制作する準備を行っている。 現在、気象庁が提供するAMeDASのデータを参照し、特別豪雪地帯で知られる次なる候補地の過去5年間の降雪量や積雪深等を調査すると共に、造形物の雪害予想や安全性を検証している。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、当初予定していた海外(北欧)での実地調査、聴取調査が実施できなかったことが原因である。本年度には、昨年度計画していた活動に助成金を使用することを予定している。
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