2021 Fiscal Year Research-status Report
Bergson's Theory of Memory as Action: A Foundation for Memory Research through Collaboration between Philosophy and Science
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21K12818
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
原 健一 北海道大学, 高等教育推進機構, 博士研究員 (90882499)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | ベルクソン / 記憶 / 身体性 / 行為志向性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ベルクソンの記憶論を解明することで、現代の記憶の哲学に記憶の行為論というオルタナティブを提示することである。2021年度は、記憶の哲学の基礎的な概念、理論の調査を主たる課題とした。そして、この課題にかんする成果を出し、またいくつかの学会発表を行なう中で、来年度(2022年度)に予定していた課題にも取り掛かることができた。
記憶の哲学の基礎的な概念、理論の調査においては、2021年9月12日に行なった「Online Workshop: Deja-vu and memory. Bergson and Modern Philosophy of Memory」での特定質問と、このワークショップの成果報告「デジャヴュと記憶――ベルクソンの現代の記憶哲学」の成果が挙げられる。これらは、平井靖史氏、D・ペラン氏との共同の成果として位置づけられる。報告者は、ワークショップにおいて特定質問、報告においてペラン氏の論考の翻訳と解説を行なった。翻訳と解説では、「オートノエシス」や「エピソード的既知感」などの記憶の哲学における基礎概念、「能力説」という記憶の哲学において重要な理論を紹介できた。そして、これらの概念や理論と、ベルクソンの記憶論との関係性を整理できた。
また、上記の調査結果を踏まえた学会発表を行なう中で、2022年度に取り掛かる予定であった、ベルクソンの記憶の行為論の解明を遂行できた。特に、2021年7月14日の国際学会「Issues in Philosophy of Memory 2.5」での口頭発表「How We Can Distinguish Recollection from Perception:A Bergsonian View」を中心として、ベルクソンの考えを上記の記憶の哲学の概念や理論と突き合わせることで、ベルクソンの記憶の行為論の内実を解明できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初課題としていた記憶の哲学の基礎的な概念、理論についての調査を報告の形で成果として出すことができた。また、ベルクソンの記憶論を現代の記憶の哲学と接続するという課題も、ペラン氏の翻訳においてはもちろん、報告者に独自の観点からの口頭発表においても遂行できた。これらの成果は本研究の進展が順調であることを示すものである。
さらに、国際的なワークショップ、国際学会では、フランス・グルーノーブル大学の記憶の哲学研究センターのD・ペラン氏、そして、K・マイケリアン氏などと親交を深めることができた。もちろん、新型コロナウイルス感染症の影響で、オンラインでのつながりしか築けなかったことは不満な点として残る。今後持続的な協働研究のつながりを構築、維持するためには、対面での国際学会への積極的な参加が必要となるだろう。とはいえ、次年度以降の国際的ネットワークの構築に向けた地盤を築くことはできたと言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の今後の推進方策としては以下の三つが挙げられる。①海外のトップジャーナルでのベルクソンの記憶の哲学にかんする論文の成果の公開、②ベルクソン研究者、そして記憶の哲学の研究者との国際的なネットワークづくり、そして引き続き、③現代の記憶の哲学の基礎的な概念、理論の紹介・解説である。
②については、国際学会や国際ワークショップの特定質問や発表の招待をすでに受けており、また、参加するべき学会とワークショップの選定もほぼ完了している。特に、2022年度は、The Global Bergsonism Research Projectの関係者とのワークショップや、同プロジェクト関係の国際学会への参加を予定している。これらの発表の機会などを利用して①・③を遂行していく。
①については、現代の記憶の哲学における能力説とベルクソン説との比較、現実的生成説というシンクレアによるベルクソン解釈の検討といった、ベルクソンの議論の分析の軸はすでに得られている。2022年度は、この分析の結果を論文として公表するという具体的な成果として結実させることを目指す。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、予定していた海外渡航費などを消費できなかったため。
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Research Products
(6 results)