2021 Fiscal Year Research-status Report
日本思想は「哲学」になりうるか─近世・近代の経典解釈史からの「日本哲学」の再構成
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21K12834
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
板東 洋介 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (90761205)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 日本近世思想 / 他者 / 仏教 / 儒教 / 国学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年は研究計画に従い、日本近世思想における他者観についての資料調査を行なった。 その成果は國學院大学研究開発推進機構日本文化研究所の公開レクチャー(日本語)と日本哲学会のワークショップ(英語)で発表し、後者は後日、英語論文集として出版される予定である。 これに付随して、「偶然性と運命」をテーマとする比較思想学会のシンポジウムでもコメンテーターとして質問を行なったが、そこでも特に仏教をめぐって輪廻や信という本研究の主題をなす問題を提起し、登壇者および参加者との間で有為な意見交換を行うことができた。そこでの討議内容は『比較思想研究』誌に掲載された。 さらに海外の出版社より19世紀東アジアにおける前近代思想・宗教から近代哲学への移行という、まさに本研究の核心となるテーマについての概説を依頼され、中国・朝鮮半島・日本にまたがって儒教・仏教がいかに西洋の哲学や宗教学の影響のもとに近代的な哲学として変容してゆき、またその過程でいかに聖人や仏といった従来信仰の対象であった人格が近代的に再解釈されていったかを英文で論じ、すでに脱稿して出版待ちの状態である。 本年度は研究初年度ということもあり、成果として発表しやすい口頭発表が中心となり、論文や共著といった形での成果発表は来年度以降にずれこんでしまったが、すでに英語論文三報の入稿を終えており、来年度以降の多くの成果を国際的に発表してゆくことが高い確度をもってみこまれる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
口頭発表が中心となり、論文投稿は行なったもののいまだ掲載予定の雑誌・共著論文集の出版は行われていない。ただし、研究初年度であることを考慮すれば、(2)おおむね順調に進展していると自己評価することが妥当であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度出版予定の19世紀東アジアの思想状況についての英文概説は本研究が予定していた最終成果の大半を盛りこむ内容となった。そこで来年度以降は、研究計画には明記していなかった国学や武士道といった日本固有の思想伝統における他者観も視圏に入れ、より総合的な成果につながるよう計画を見直したい。
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Causes of Carryover |
海外の国際学会での成果発表を予定していたが、コロナ禍によりほぼ全ての学会がオンライン開催となったため、旅費を支出する必要がなくなった。 次年度以降も国際学会の開催形態が対面となるかオンラインとなるかはきわめて流動的であるため、状況をよく確認し、オンライン開催の可能性が濃厚となる場合はいっそう研究を進展させるための資料購入などに切り替えるようにしたい。
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Research Products
(3 results)