2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K12857
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
森 元斎 長崎大学, 多文化社会学部, 准教授 (40846052)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アナキズム / 具体性 / 相互扶助 / 基盤的コミュニズム / 思想史 / 哲学 / 負債 / パースペクティブ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究では、哲学・思想史と人類学とで、同様のテーマが検討されながらも、それらが必ずしも重なることなく、並行したまま研究が行われてきた現状に対して、研究代表者の研究は、これらを共に扱うと同時に、哲学・思想史の枠組みで、人類学の研究を普遍化していくことに学術的な独自性と創造性が認められる。とりわけ「相互扶助」と「具体性」という概念を基軸に据えて研究していくことによって、人類学でも扱われる個々の事例も踏まえながら、テキストや思想家ごとにどのように論じられているのかを厳密な読解を通じて行ない、アナキズム思想の展開という観点からも世界でも類例をみない独自性と創造性を有することが明確である。特に、レヴィ=ストロースの構造主義や、クラストルの国家にこうする社会、グレーバーの負債論など人類学で議論されるテーマを取り上げながら、哲学的な概念としての相互扶助と具体性に肉付けを行い、そうした哲学の実践としての日常生活のあり方を模索した。そこで、今年度は以下の業績を提出した(主なものに限る)。 ・森元斎「瀬戸内寂聴のアナキズム」『ユリイカ』青土社、2022年2月では、純粋な文学作品というよりもリサーチ型の作品として瀬戸内が作品化しているもの、とりわけアナキズム三部作と呼ばれるものを取り上げ、金子文子、伊藤野枝、菅野スガ子が思考し、実践したアナキズムの射程を明らかにした。そこには日本語圏でのフェミニズム実践の先駆けとして彼女らが思考し、実践したことを明らかにした。 ・森元斎「百姓と地球」『ユリイカ』青土社、2022年1月では、ダンサーである田中泯の大地との関わりを軸に、そこで感じ取れる「なんでもない踊り」を実践することに対して、分析方法としてアナキストであるエリゼ・ルクリュやエドワード・カーペンターの地球論を軸に、田中のダンスに一定の視座を与えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍であったため、資料収集のための出張や外国人研究者の招聘は叶わなかったものの、国内での研究会やzoomでの研究会・読書会は今まで以上に推し進めることができ、厳密な資料の読解に関しては順調に進展した。共同性を担保するための「負債」や「パースペクティヴ」といった新たな論点が浮上してきたこと、また引き続き基盤的コミュニズムや相互扶助、具体性といった概念の内実を深く掘り下げている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度も引き続き、今まで以上に国内の研究会やzoom研究会・読書会を進展させ、論文化、あるいは書籍化をおこなっていく予定である。早ければ2022年度、遅くとも2023年度には以文社から論文集の刊行を計画している。また2022年度はローザンヌやハンブルクなどの各都市にある資料室や図書館に赴き、資料収集を行い、新たな研究の展開を見出していきたいと考えている。また国外では国際学会の対面化が行われつつあるので、所属大学の国外出張が解禁され次第、出席したいと考えている。
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Causes of Carryover |
東京出張を検討していたが、コロナ禍での大学規定により、出張が叶わなかったため。翌年度も東京出張への予算として検討している。
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Research Products
(6 results)